もし、あなたが以下のAさんについて評価するとしたら、どのような評価をするでしょうか?
Aさん「私には借金500万円あります」
良い評価をするでしょうか?
それとも、
悪い評価をするでしょうか?
Aさんについて上記の発言(発言内容は正しいものとする)以外の情報が特になかったらどうでしょうか?
多くの人はAさんに対して、
「借金が500万円もあるなんて、Aさんはだらしがない人なのでは?」
と反射的に悪い評価をする方向に考えてしまいがちです。
しかし、
私の感覚では、
上記の情報だけではそもそも評価できない
と考えます。
何故ならば、
借金の有無しか情報がない場合には、良い評価をすることもできるし、悪い評価をすることができるため、どっちにころぶのかわからないからです。
「借金が500万円もあるなんて、Aさんはだらしがない人なのでは?」
という印象を抱いてしまう人は多いのですが、
「借金が500万円もあるなんて、Aさんはだらしがない人なのでは?」
という文をよく見てみてください。
①Aさんには借金が500万円ある
という事実に対して、
②500万円は多い
③Aさんはだらしがない人
という形で2か所
評価
がされていることがわかります。
まず、②については、
「そもそも、500万円という金額は多いと言えるのか?何か根拠はあるのか?」
と疑問を抱くことが可能です。
借金100万円を基準に考えている人は、借金500万円を多いと感じるでしょうし、
借金1000万円を基準に考えている人は、借金500万円を少ないと感じることでしょう。
人それぞれの感覚で基準が異なるのでこれはどちらの方向にも評価を行うことが可能です。
したがって、
多いor少ない
という評価を加える際には、これに関連する一定の基準が前提として存在することとなります。
多いor少ない
という評価を加える際には、
「自分の考えている基準は何か?」
ということや
「他人が考えている基準が何か?他人から見て自分が考えている基準と異なる点は存在するのか?」
ということを意識してみると良いでしょう。
評価に関して争いがある場合には、ここにいう基準の設定が事実上の争点になる場合があるので、なぜこの基準が正しいと考えるのかといった根拠を他人に対して提示する必要があります。
このように考えていくと、単に
多いor少ない
という評価であっても、自分が直感的に感じた評価が妥当なものであるのかは実はそこまではっきりと考えられていない、ということがわかると思います。
②のように一見単純な評価であっても、よくよく考えると、それは反射的に断言できるものではないことがわかることでしょう。
そして、
③Aさんはだらしがない人
というAさんの性格面に対する評価というのもその根拠が一体何か?ということが非常に重要になります。
③Aさんはだらしがない人
という評価を加える際に提示された情報は
①Aさんには借金が500万円ある
という事実だけです。
これについて、
「そもそも、借金というのは真面目に生きている人は行わない物であり、浪費を繰り返したり、生活費が足りなくなってしまった人がその怠惰な性格ゆえに借金を重ねる物である」
といった思い込みがある場合は、この思い込みを根拠にして、
「Aさんは借金をしているというのだから、きっと浪費を繰り返したり、生活費が足りなくなってしまっただとか言って借金を重ねてきたのだろう、そして自ら破綻に向かっているのである」
とAさんの性格面や生活態度について考察を進めて、
「よってAさんはだらしがない人である」
という評価をしているのでしょう。
このように借金というものに対する悪い思い込みがバイアスとして存在する場合には、借金をしているという事実だけでAさんに対する悪印象をもつことでしょう。
しかし、そもそも、借金をすることは悪いことであるとは限りません。
世の中には借金マウントというものが存在しており、
「私はこんなにもたくさんの借金をできるほど、信用力の高い人物である」
といった一種の自慢話にも使われるものなのです。
冒頭において、書かれた
Aさん「私には借金500万円あります」
については特に何もAさんの様子について書かれてはいませんが、
実は、
Aさん「私には借金500万円あります(ま、ぶっちゃけ全然困ってなんかいないけどね。むしろ、こんなに借りている私って凄いでしょ?)」
という意味である可能性もあるのです。
Aさんは実は億万長者で金融資産を手に余るほど保有しており、借金500万円程度ならば余裕で返済することも可能だが、敢えてまだ返していないだけ、といった可能性もあるのですね。
このように、
借金の有無しか情報がない場合には、良い評価をすることもできるし、悪い評価をすることができるため、どっちにころぶのかわからないのです。
しかし、
借金=悪いこと、といった認知バイアス、固定観念にとらわれていると、
Aさんの状況や性格、発言の真意を見抜けなくなる可能性があります。
このように、
事実→根拠→評価
というプロセスをしっかりと意識し、事実と評価を分けて考えましょうということは、学校教育においてもよく言われていることですが、
実際には、借金=悪いこと、といった認知バイアスを自覚できないままだと事実と評価を上手く分けて考えるということは非常に困難になります。
「私には借金500万円あります」と言われたらその人をどう評価しますか?という問いはそのことを思い出させてくれるものです。