「仕事で感謝されたい」「ありがとうと言われたい」という就活生はとても多いです。
気持ちはとてもよく分かります。
しかし、これはどのようなシチュエーションを想定しているのか、しっかりと考えるとかなりハードルが高いことがわかります。
そもそも、私たちはどのような場合に「ありがとう」と言うのか
そもそも、あなたはどのような場合に「ありがとう」と口にすることが多いでしょうか。
普段の生活を思い出してみてください。
友達に何かプレゼントをもらうことができたときには多分嬉しさから「ありがとう」というのかもしれませんね。
しかし、例えば実家などで親がご飯を作ってくれてそのご飯が出てきたときはどうでしょうか?
コンビニで店員さんにレジの処置をしてもらったときはどうでしょうか?
宅配便の人が配達物を持って家にやってきたときはどうでしょうか?
映画を見に行って受付の人に会って施設を案内されたときはどうでしょうか?
レストランで注文した料理をウェイターさんが持ってきてくれたときはどうでしょうか?
自分の家やマンションなどで清掃をしてくれる人を見かけたらどうでしょうか?
大学でキャンパスの清掃をしている人を見かけたときはどうでしょうか?
それぞれ、「この時は普段から言ってる」「この時は言わない」というのがあるのではないでしょうか?
上に上げた人たちは多かれ少なかれ、「他人のために労働をしている人たち」であり、かつ、少なくとも「あなたにとって役立つことをしてくれている人たち」だと思います。
とすれば、この場合、「感謝すべき」「ありがとうと言うことが望ましい」と考えられます。
それにもかかわらず、このような場合に、現実的にあなたが「この時はありがとうというが、この時はいちいちありがとうと言っていない」
というのがあるはずです。
では、何故、言っているときと言っていないときがあるのでしょうか?
例えば、
「正直、やってもらえるのが、あまりにも当たり前だと思っていた」
「お金を払った分をやってくれていると思っているからいちいち言わなかった」
「心の中では感謝はしているものの、いちいち言葉にするタイミングを逃した、わざわざ言わなかった」
あたりの理由はすぐに出てくるのではないでしょうか。
このように理由を挙げてみて、改めて考えてみましょう。
あなたが企業に就職した際にやる仕事って、「この時は、いちいちありがとうと言っていない」とあなたが思っている分野と被っていませんか???
被っていないのであれば安心できるかもしれませんね。
何故なら、仕事をがむしゃらに頑張れば「ありがとう」と言ってもらえる可能性がそれなりにあるので貴方の要望である「仕事をしてありがとうと言われたい」「仕事で感謝されたい」という願いが叶いやすいからです。
とにかく頑張れば良いのですから、そして、それ以上何も考えなくてもよいのですから、本当に楽です。頑張ってください。
しかし、実際は被っていない可能性が高いのではないでしょうか?
特に、仕事をするとお客さんからお金を支払ってもらうことが多いのですから、
「お金を払った分をやってくれていると思っているからいちいち言わなかった」
という要素はあると思います。
仮にあなたがこのような事を思っていなくとも、世の中の多くの人は「お客様は神様論」ではないですが、「お金を支払うという形で既に対価は支払っているのだからそれで十分であり、ゆえに仕事によって役に立ってもらえるのは当たり前であり、いちいち『ありがとう』などとは口にしようとは思わない」と考えている可能性は高いです。
また、いわゆるバックオフィスだとそもそもお客さんとの接触がないことから、口頭で「ありがとう」と言われる機会すらそもそも存在しない、という可能性があります。
ここまで考えてみるとわかるのでしょうか。
仕事で感謝されたい、仕事を頑張ることによってありがとうといわれたいという願望はかなりハードルが高いです。
むしろ、頑張っているのにクレームが来たりすると、感謝されるために普段から頑張っているのにもかかわらずここまで言われないといけないだなんて自分は実は役に立たない人間ではないか、この仕事に向いていないのではないか、という風に考えがちです。
これが数ヶ月単位で続くとすっかり自信を失い、だいたい精神を病みます。
これが社会人になった際に病んでしまう人の特徴の1つかもしれません。
これを防ぐためには、自分の胸に手を当てて、
「そもそもありがとうと言われることは本当に稀少であり、滅多にない。むしろ、『ありがとう』とわざわざ口に出して言ってくれる人こそができる人である、そのような人にこそ感謝するべきである」
という前提を頭の中に入れた方がいいと思います。
むしろ、私が「仕事で感謝されたい」と話している人を見るたびに、
「こんなにも人の役に立ちたいと考えている人が多いと言うことは、もはやこういう人に対して『ありがとう』と言ったり、感謝の気持ちを見える形で示すことこそがむしろ、重要な『人の役に立つ仕事』ではないか」
と考えています。
実際の状況をシミュレーションした上で、「仕事で感謝されたい」という気持ち自体を見直してみることが重要かもしれませんね。