社会人も2年目になると就活生からのエントリーシートを読む機会が増えてきました。
そして、そこには「人の役に立ちたい」「ありがとうと言われる仕事をしたい」と書かれていることが多いです。
一人二人ではないレベルでこのような記述をエントリーシート上で見かけるので、おそらくこのように考えてエントリーシートを出している大学生はとても多いのでしょう。
しかし、それ以上のことを書いている人は少ないという印象です。
これらのエントリーシートを何枚か見ていると「人の役に立つ」「ありがとうと言われたい」という記載について思うところが出てきました。
簡単に言うと、「どういう状況」を想定して、そのような記述をしているのかもっとよく考えて欲しい、と思います。
「人の役に立つ」とはどういう状況?
「人の役に立ちたい」というのは本当によく見ます。
わざわざ私がここで指摘するまでもないですが、およそ誰の役に立っていない仕事はビジネスとして成立しようがないので、放っておいても倒産すると思います。
そのため、「人の役に立ちたい」というのは、「自分が選んだ仕事を通じて」という補足が暗黙の了解としてついていると思われます。
そして、本人が選ぶ仕事というのは、「今の自分だったらできるかもしれない事」や「将来の自分ができるようになるかもしれない事」が選択されているのでしょう。
少なくとも、潜在的には自分の能力が期待できる分野を選んでいると考えられ、およそ自分ができるようになる見込みのない、期待が持てない分野が選択される事はないと思います。
そのように考えていくと、当然ですが、「採用する企業側の視点」から見ると、
「あなたは何ができる、なし得る見込みがあるのでしょうか?あるとしたらその根拠は何かあるのでしょうか?」
という話になります。
大学生くらいですと、能力そのものをアピールすることは厳しいというか、そもそも、それを持っている人はかなり稀少であると思われます。
したがって、「なし得る見込み」の部分をアピールせざるをえなくなると思います。ポテンシャル採用を狙うわけですね。新卒採用で見られているのはその部分です。
他に付加要素として見られているのは、「先輩視点から見て指導しやすいか」「意味も無く反抗的な要素がなく、素直か」といった、「一緒の職場で働いてもらった際に他のメンバーにとって不都合がないか、一緒に働いてもおよそ良さそうだと思えるか」という点になります。
それはさておき、
話を戻すと、なし得る見込みをどうやってアピールするのか、という問題が生じてきます。
ここで出てくるのがよく言われているとおり、自己分析になります。
なし得る見込みをアピールする際の要素としては、「①その能力を手に入れるだけの理由、動機付けが存在している」、「②その能力を手に入れるための方法論を朧気ながらでもよいので既につかんでいる」
あたりを考察してアピールを考えていくと良いと思います。
この2つの要素がアピールできなければ基本的にその人が特定の能力を手に入れることは想定できないのではないでしょうか?
①については、「自分の将来の夢は●●です」、ということや、「●●ができるようになれば、このような人を助けることにつながると考えています」という文脈で、未来を語る必要が出てきます。
そして、未来というのはある日突然出てくる物ではなく、基本的に過去や現在から論理必然的に導かれる物です。
例えば、サッカーを毎日やっている人と、毎日ピアノを弾いている人と、毎日図書館にこもって本ばかり読んでいる人というのはそれぞれの過去や現在が違っていることから特別な事情が無い限りは、ここから論理必然的に導かれる未来があるはずです。
これは、例えば、サッカーを毎日やっている人がある日突然ピアノのプロフェッショナルになるということは基本的に想定しがたいという話です。
また、「サッカーのプロを見て感動した!かっこいいと思った!!」というエピソードを持っている人は、他に何も無い限りは、「というわけで、私はピアノのプロになることにしました!将来の夢はピアノのコンサートを開くことです!」という話は、不可能ではないものの、基本的にできず、そして、この話を聞いている側からすると繋がりが全く見えません。
現在や過去における原体験、すなわち、その能力を手に入れるべき理由、動機付けが生じていると(他人の目から見て)言えるような出来事、エピソードがあることが望ましいということになります。
そのため、「人の役に立ちたい」という文章の付近にこのような記述があれば、読みやすいです。
とはいえ、
「いや、そもそも、そんなものないんですけど、、、、何でもいいから職について生活のために金が欲しい。」という人もいるかもしれません。
というか、そこそこ、このような人もいると思います。
これは場合にも依りますが、年収が高めの企業を受ける際には、「僕は●●という理由で大金が必要なので、とにかく給料が高い企業がいいんです!そのためだったら何でもするという覚悟があります!!!!」というやり方もあり得ます。
これもがむしゃらに頑張るだけの理由があると言うことで、「①その能力を手に入れるだけの理由、動機付けが存在している」という意味では十分なアピールにはなっていると思います。
まあ、好みは分かれてしまうと思いますが。。。
いずれにしろ、このような能力を手に入れるだけの理由、動機付けが存在しているという文脈でアピールをするという視点そのものが必要になります。
次に、「②その能力を手に入れるための方法論を朧気ながらでもよいので既につかんでいる」についてですが、これは要するに目標の達成能力の高さを指しています。
こちらの方が話が早いです。
というのも、若くして高学歴を手にした人や、難関資格に早期合格した人というのはプロフィールに適当にその経歴を書くだけで、目標の達成をした経験を既にアピールできるわけです。
就活において、高学歴の人が楽に書面を通ったりすることが多いのは、この要素が身についていることが端的にアピールできているからです。
彼らは黙っていても学歴だけで②がアピールできるので、①をアピールするための対策をして、さらに、付加要素の対策もしておくだけで足りるので比較的楽に就活をクリアすることができます。
では、黙っていてもアピールできない人はどうすればいいのでしょうか?
ここで「大学生活で頑張ったことは何ですか?」という定番の質問への対策が生きてきます。
この質問は要するに「自分で設定した目標を達成したという経験があるのか?」ということを聞いています。
ここにおいて、エピソードをしっかり持っていて説明もしっかりしている人は、②の要素を持っているとして採用できる、という話になります。
「挫折した経験はありますか?」という質問も、目標達成の過程でぶつかった障害に当たったときにどのような反応をしたか、どのように乗り越えたのか、対策したのか、という事を聞いています。
このように、定番の質問というのは意味があります。
それゆえに、「人の役に立ちたい」という気持ちを就活の際に持っているのであれば、上記のような考察を自分で行っていただき、これらを説明できるレベルになっておいた方がいいと思います。
このような考察がエントリーシート上で少しでも垣間見えたら、「この人はいいな」と思ってもらいやすいです。