いわゆる、敏腕弁護士というとどのような人を思い浮かべるでしょうか?
これに関してはいろんなイメージがあると思われますが、
無罪判決を勝ち取った弁護士
などは非常に目立ちますし、優秀そうに見えます。
実際に、日本の刑事裁判の場合は有罪率が圧倒的に高く、
無罪判決が出ることの方が珍しいため、
無罪を勝ち取れる弁護士というのは非常に良さそうに見えます。
しかし、よく考えると、
刑事裁判にかけられてしまったが無罪判決を勝ち取った場合
よりも、
そもそも起訴させない、刑事裁判にかけられないようにしてくれる弁護士の方が良いのではないか?
と考えることができるでしょう。
というのも、刑事裁判にかけられたという事実だけで世間的にはマイナス評価されかねないですし、無罪を獲得できたとしてもこの手続きのために膨大な時間と労力も取られます。
そもそも、弁護士の役割はクライアントを法的トラブルから守ることであり、その手段として起訴を避けることが挙げられます。起訴されないことは、クライアントにとって無罪を証明する必要がないという意味で、弁護士のスキルが発揮される場面でもあります。
一般的に、起訴を避けるためには事前のリーガル・リサーチや交渉スキルが必要です。クライアントの行動や状況に基づいて、法的問題を未然に防ぐためのアドバイスを提供できる弁護士は、クライアントにとって非常に価値があります。
そのような弁護士は、法的リスクを事前に把握し、クライアントに対して適切なコンプライアンスや対策を提案できる可能性があります。たとえば、契約書の適切な構築や法令順守のアドバイス、争議の予防策の提案などが挙げられます。
さらに、交渉スキルも重要です。弁護士がクライアントの立場を的確に伝え、対話を通じて紛争を解決できれば、訴訟を回避することも可能です。法廷闘争を避けることは、クライアントにとって時間と費用の節約につながります。
このような能力を持つ弁護士は、事前にクライアントの立場を守り、かつ法的トラブルの回避に成功する可能性が高まります。
依頼者がそのような弁護士を見つけにくい理由はいくつか考えられます。
まず、法的トラブルに直面していない段階では、依頼者は一般的に法的な専門知識が不足しており、将来的な問題を予測することが難しいためです。その結果、予防的な法的アドバイスや対策が必要なことに気付きにくいです。
また、一部の依頼者は法的な問題が発生するまで弁護士に頼ることをためらうことがあります。これは、法的コンサルティングや予防策に対する費用が明確でないことや、法的問題が把握しきれないと感じることが影響しています。
さらに、多くの弁護士が争訟に特化しているという認識が一般的であり、予防的なアドバイスやトラブル回避に特化した弁護士が十分にアピールされていない可能性もあります。
依頼者はしばしばトラブルが発生してから弁護士を探し始め、その時点で争訟対応に強い弁護士が主に注目される傾向があります。
また、弁護士にはクライアントとの間に守秘義務が存在しています。この守秘義務のため、特定のケースで起訴を避けた弁護活動が表に出ることは難しいです。クライアントのプライバシーを守るために、成功裏に解決されたケースや事前に争いを回避したケースは一般的に公にはされません。
この事実が、依頼者が起訴を避けるスキルを持った弁護士を見つけにくくする一因となっています。
成功事例が表に出にくいため、実績やスキルの評価が難しくなるのです。
逆に言えば、守秘義務がクライアントにとってプラスとなる点でもあります。
このような理由から、依頼者が予防的かつトラブル回避に焦点を当てた弁護士を見つけることは、一般的には難しいと言えるでしょう。
そのような中でも、予防医療などのような、第2領域の活動、すなわち、
重要だが緊急ではない
という活動の重要性にしっかりと気づいている依頼者は、
予防医療ならぬ、予防法務に強い弁護士のお世話になった方が良い
ということがわかっているので、このような弁護士に頼ることをしやすいです。
弁護士に限らず、目立つ成果をあげている人をみると、
「あの人はすごい」
と世間的にも思われやすいのですが、
実は
何も起きていない
平和
平穏
という状態を維持できていることの重要性に気づくことができるか、
ということが第2領域の活動並びにこのような弁護士選びの際にも重要なのです。