「部下が自分の指示通りにやってくれない……」
と悩んでいる方が時折います。
この際、
「確かに、指示をする際の日本語がおかしかった」
「もっと具体的に作業工程を書くべきだった」
と感じるのであれば、それを次回から指示をする側は改善するべきでしょう。
しかし、それ以上に根深い問題、根本的な問題にそもそも気づいていない人が時折います。
それは、
「毎回、具体的な指示ばかりを出して、抽象的な目的・意図を伝えない」
ということです。
例えば、
郵便を部下に出してもらいたいとき、
・どの案件の件で
・何を
・どこに
・誰宛に(住所)
・いつまでに
・どのような手段で(普通郵便、FAX、レターパックライト等)
といった具体的な工程を正確に書くことができれば、まともに日本語を理解できる人はその通りに業務を遂行してくれるでしょう。
しかし、その際に、
「どのような目的で」
といった抽象的な意図を記載しない人がいます。
確かに一見すると、
「抽象的な意図なんて知らなくても、業務はできるでしょ?具体的な工程を正確に指示すれば十分では?」
と感じるかもしれません。
しかし、ここに落とし穴があります。
それは、
「いつでも具体的な工程を正確に指示できるとは限らない」
という現実です。
「そんなことあるの?」
と感じる人もいるかもしれませんが、
忙しい人にはままあることです。
むしろ、
「自分はいつでも、具体的な工程を正確に指示できているから特に問題はない」
と考えている人こそ、緊急事態の際に足元をすくわれやすいと言えるでしょう。
例えば、試験で「ケアレスミス」と呼ばれるような些細なミスをしてしまった経験はないでしょうか?
それと同じように、
「書き間違い」
「タイポ」
「言い間違い」
というのは誰にでも起こることです。
まさか、
「自分に限ってそんなことをするわけがない」
なんて思っていませんか?
過去をよく思い出してください。
そのような時に、具体的な指示ばかりを出している人は、結果的に、
「間違った具体的な指示を部下に出してしまう」
ということになるのです。
部下が正確に指示を遂行できればできるほど、このような誤った指示通りに業務を遂行してしまうということになりかねません。
しかし、抽象的な意図や目的をセットで部下に指示している人の場合には、
「あれ?これってもしかして書き間違いで、××ではなく、本当は●●なのではないでしょうか?」
という形で、部下からのチェックをしてもらうことが可能になるのです。
何故ならば、具体的な指示と抽象的な目的をセットにして部下に伝達している場合、
「◆◆の場合には、なるほど、○○をすることになるのか」
という
「理解」
とともに、業務を遂行することになるからです。
それゆえに、指示する側が変な書き間違いをしてしまったとしても、
「あれ?目的と手段が食い違ってるぞ?」
という違和感が発生するため、
「これは指示をミスしたのでは?」
という気付きを部下側が得ることができるのです。
これができるようになると、結果的に大事故を防ぐことが可能になります。
普段の忙しくないタイミングでは、
「指示を具体的にできているから大丈夫」
と思いがちですが、
いつまでもそのような「忙しくない」「余裕がある」という状態を維持し続けられるとは限りません。
それゆえに、普段の忙しくないタイミングから、
①抽象的な目的・意図
と
②具体的な作業工程
をセットで部下に伝えるようにしましょう。
人間というのは、このような抽象的な目的と具体的な手段との関連を「理解」することによって、
推認力
を得ることができる存在です。
そして、次の仕事が来た際には、
「今回は前回と違って××だからきっと○○かもしれない」
という推認力を働かせながら仕事をしてもらえるようになります。
その可能性を軽視しすぎるのはよくありません。
ここまでやってみて初めて
「教育をしている」
「育成をしている」
と言えるでしょう。
部下を育成する際には、
①抽象的な目的・意図
と
②具体的な作業工程
をセットで伝えるのが最重要です。
②だけを伝えても、それは「意図」までもコミュニケーションできたとは言えず、次につながらないのです。