「教養を深めたい」
「何か、今から新規に勉強するとしたら何が良いか?」
と考えた際に、長い目で見ると、
認知バイアス
というものは外せないと考えています。
何故ならば、私たちは、日常的な生活から、重大な決断まで、無意識下で起こる認知バイアスからどうしても逃れられないからです。
数多くあるとされる、認知バイアスについて知っておくことは一種の教養と言えるでしょう。
例えば、
損失回避バイアス
というものがあります。
損失回避バイアスとは何か
損失回避バイアスとは、利益よりも損失をより大きく感じるという人間の心理的な傾向です。
具体的には、同じ大きさの利益と損失があった場合、損失の方がより大きな心理的な影響を与えるということです。
なぜ人間は損失回避バイアスを持つのか
人間は、狩猟採集民時代に生きていた頃、食料や物資などの資源を確保することが生存に不可欠でした。
そのため、損失を被ることは、直接的に生存に関わると考えられるようになり、損失回避バイアスが進化的に形成されたと考えられています。
損失の定義: 人によって異なる価値観
とはいえ、損失の定義は、人によって大きく異なることがあります。
例えば、以下のような場合、ある人にとっての損失は、別の人にとっての損失とはならない可能性があります。
- お金: 経済的に困窮している人にとって、お金を失うことは大きな損失となります。
- 時間: 時間に余裕がある人にとって、時間を失うことはそれほど大きな損失ではないかもしれません。
- 信頼: 人からの信頼を失うことは、多くの人にとって大きな損失となります。
- 健康: 健康を失うことは、取り返しのつかない損失となります。
- 機会: 何かを成し遂げるチャンスを逃してしまうことは、大きな損失となります。
価値観の相違が生じる理由
価値観の相違が生じる理由は、様々な要因があります。
- 個人の経験: 過去の経験は、人の価値観に大きな影響を与えます。
- 文化的な背景: 文化的な背景によって、人々の価値観は大きく異なります。
- 社会経済的な状況: 社会経済的な状況によって、人々の価値観は異なります。
- 性格: 人の性格によって、価値観は異なります。
損失のイメージや定義を変更するための働きかけ
損失のイメージや定義を変更するためには、以下のような働きかけが考えられます。
- 教育: 損失回避バイアスの仕組みや、損失に対する考え方について教育を行う。
- 経験: 実際に損失を被ることで、損失に対するイメージや定義が変わる可能性があります。
- 情報提供: 損失回避バイアスのデメリットや、損失を回避する方法についての情報を提供する。
- ロールモデル: 損失を乗り越え、成功を収めた人のロールモデルを示す。
具体的な例を考えましょう。
1. エピソード1: 投資家と起業家
登場人物
- 田中さん: 50代男性、リスクを避け、安定志向の投資家
- 佐藤さん: 30代女性、チャレンジ精神旺盛な起業家
状況
田中さんは、長年積み重ねてきた貯蓄を元手に、安定志向の投資を行っています。一方、佐藤さんは、起業して成功することを夢見て、貯蓄を元手に事業を立ち上げています。
問い
田中さんと佐藤さんにとって、「損失」とはどのような意味を持つでしょうか?
考察
田中さんにとって、「損失」とは、お金を失うことを意味します。彼は、長年かけて積み重ねてきた貯蓄を失うことを恐れており、リスクを避けようとする傾向があります。
一方、佐藤さんにとって、「損失」とは、挑戦しないこと、成功する機会を失うことを意味します。彼女は、起業して成功することを夢見ており、失敗することを恐れていません。むしろ、失敗を経験することで成長できると考えています。
2. エピソード2: 会社員と学生
登場人物
- 山田さん: 30代男性、安定志向のサラリーマン
- 鈴木さん: 20代女性、夢を追いかける大学生
状況
山田さんは、安定した職場で働き、悠々自適な生活を送っています。一方、鈴木さんは、大学で勉強しながら、将来はミュージシャンになることを夢見ています。
問い
山田さんと鈴木さんにとって、「損失」とはどのような意味を持つでしょうか?
考察
山田さんにとって、「損失」とは、安定した生活を失うことを意味します。彼は、今の安定した生活を手放すことを恐れており、変化を避ける傾向があります。
一方、鈴木さんにとって、「損失」とは、目指せたはずの夢を諦めることを意味します。彼女は、ミュージシャンになるという夢を叶えるために、努力を惜しまず、挑戦し続けています。
3. エピソード3: ベテランエンジニアと新人エンジニア
登場人物
- 高橋さん: 50代男性、豊富な経験を持つベテランエンジニア
- 渡辺さん: 20代女性、意欲的な新人エンジニア
状況
高橋さんは、長年培ってきた経験と知識を活かして、安定した仕事をしています。一方、渡辺さんは、入社間もない新人エンジニアとして、様々なことに挑戦しています。
問い
高橋さんと渡辺さんにとって、「損失」とはどのような意味を持つでしょうか?
考察
高橋さんにとって、「損失」とは、これまでの経験や知識を活かせなくなることを意味します。彼は、長年培ってきたものを失うことを恐れており、新しいことに挑戦することをためらいます。
一方、渡辺さんにとって、「損失」とは、挑戦する機会を逃すことを意味します。彼女は、新しいことに挑戦することで成長できると考えており、失敗することを恐れていません。
これらのエピソードは、損失のイメージや定義が人によっていかに異なるかを示しています。
損失回避バイアスを克服し、より豊かな人生を送るためには、自分にとっての「損失」とは何かを理解し、そのイメージや定義を状況に応じてアップデートし、「損失」に対する捉え方を変えることが重要です。
まとめ
損失回避バイアスは、人間にとって普遍的な心理傾向です。
このバイアスを理解することで、自分の行動や意思決定をより客観的に捉えることができるようになります。
また、損失のイメージや定義を変更するための働きかけを行うことで、より豊かな人生を送ることができるようになるでしょう。
具体的には、
「損失がありそうだから、怖くて動けない」
という状態から、損失に対するイメージや定義を変えることによって、
「むしろ動かなければさらなる損失が生じてしまう!」
と損失回避バイアスをブレーキではなく、アクセル、すなわち、自らの行動を促す起爆剤に変えてしまうことすらも可能なのです。
ポイント
- 損失回避バイアスとは、利益よりも損失をより大きく感じる人間の心理的な傾向である。
- 人間は、進化的に損失回避バイアスを形成してきたと考えられる。
- 損失の定義は、人によって大きく異なる。
- 価値観の相違は、様々な要因によって生じる。
- 損失のイメージや定義を変更するためには、教育、経験、情報提供、などによる働きかけが考えられる。