先日、以下のようなニュースが飛び込んできました。
歌手の長渕剛(65)さんが、北海道にて
「この土地を外国人に売らないでほしい」
と熱弁したことが話題になりました。
「この北海道という街は、その昔、開拓民たちが一生懸命に開拓した街だ。お願いだから、この自然に満ち満ちたこの土地を、外国人に売らないでほしい」
とする熱弁のスピーチたちは観客たちに感動を与え、
「感動しました!」
「愛国心だ!」
と絶賛する声も聞かれました。
感動的ですね。
現実的に、土地を外国人に売らなければやっていけない事情が売主にもあるのでしょうが、そのような葛藤に対しても心動かす力があるのかもしれません。
ところで、
この手の、
「外国人に日本の物を売るな!日本を守れ!」
といった愛国心が強そうな触れ込みを見た際に私はふと頭の中に思い浮かべることがあります。
それが、
原野商法
と
愛国商法
です。
まず、原野商法の方ですが、
Wikipediaによると、
全く価値のない土地を売りつける悪徳商法
と言われます。
不動産の価格は、その土地の価格に大きな影響を受けるわけですが、
土地勘のある日本人からすると、
「こんな立地の土地だと二束三文だろうな、使い道もなさそうだし……」
と感じるような土地であっても、
セールストークに上手いこと乗せられた外国人の中には、
「この土地は買う価値があるのではないか?」
と感じさせることがあるのですね。
原野商法:
ほとんど価値のない土地を高額で売りつける商法のこと。1960年頃から盛んに行われるようになった。悪質不動産会社が、「今は非常に廉価だが将来値上がりが確実」といった虚偽の説明を、時には著名人の推薦文が入ったパンフレットなどを使って行い信用させ、その土地を購入させる。 購入代金はだいたい1坪あたり3000円程度で総額100~200万円が相場であり、当該の土地も北海道などの遠方であるため、被害者は現地を見ずその場で購入を決めてしまうことが多かった。70年代には社会問題化し、80年代になると取り締まりが厳しくなって、原野商法はほとんど消滅した。しかし2000年代に入ると、原野商法で購入した土地の管理や税金の支払いに困った被害者を狙い、売却のためのサービス料を請求する二次被害が多く発生し、2013年には、国民生活センターや北海道などが注意を呼びかけるに至っている。
https://kotobank.jp/word/%E5%8E%9F%E9%87%8E%E5%95%86%E6%B3%95-191231
不動産業者によってはかなり悪質な勧誘を行っていた例もあります。
これに加えて、
「外国人に日本の土地を買い占められてしまった!取り返そう!」
と煽って、この土地を買わせるのが
愛国商法
と呼ばれるものです。
普通の状態でその土地を見れば、
「このような土地はいらない」
と考えたとしても、
外国人から日本の土地を取り戻す、といった大義名分がここに加わることで、
「少しでも価格が高くても、愛国のためにあの土地を買い戻す!」
と考えてしまい、高い値段で買わされることになります。
このような
原野商法や愛国商法を組み合わせると不動産の仲介業者は大儲けすることが可能です。
要は、取引のたびに値段を吊り上げることが可能なうえに、不動産の仲介手数料は不動産の価格によって上昇するため、いわゆる両手取りも可能なこのような
愛国ビジネス土地売買スキーム
とも称することができるこのやり方はかなり美味しいと思われます。
「この土地を外国人に売らないでほしい」
といった愛国心が強い主張は昔からされており、このような主張は私たちの心を揺さぶりますが、
原野商法や愛国商法というのも同時に存在しますよ、というお話でした。