私は仕事柄、翻訳のような仕事をすることがあります。
もちろん、私は通訳の業者とかではないため、常日頃から翻訳をしているわけではなく、本質的な仕事の「ついでに」翻訳の作業が必要になることになります。
具体的には、海外のお客様との直接のメールのやり取りもありますし、
「日本人にメールを送りたいから、この英語のメールを日本語にしてほしい」
といったこともやることがあります。
その際に感じることとして、
英語力以上に日本語力がかなり重要になる
ということになります。
まず、多くの文章は、目的があります。
それは、友達に送る場合もありますし、
恋人に送る場合もありますし、
見知らぬ多数の人間に送る場合もありますし、
重要な取引先に送る場合もあります。
そして、ファーストコンタクトの場合は別にして、
大抵の場合には、その文章を送る目的と関連した文脈が存在します。
この文脈を読み取ることが重要です。
何故ならば、
そもそも原文の英語が間違っている場合がある
ためです。
学校のテストなどで英文の日本語訳を書いてきた人にとっては、
「実は、翻訳対象の英文がそもそも間違っている」
ことはあまり想像できないかもしれません。
しかし、いわゆる書き間違い、タイポも含めて、原文が実は誤っているという場合も存在するのです。
今までの人生において日本語で書き間違いをしたことが一度もないという人以外は、このようなこともあり得るということもわかると思います。
したがって、それを機械的に翻訳すると当然日本語訳も間違っているということになります。
原文の間違いに気づくためには、英語力も必要ですが、それ以上に文脈を読む力が必要になります。
それに気づくと、
「ここは○○と書いてありますが、××ではないでしょうか?」
とお客様に聞くことができます。
また、書き手の意図と英文に齟齬がない場合でも、
実は、法律上、その英文の内容を相手に送らない方が良いため、英文自体がそもそも不適切な内容となっている
という場合もあります。
こちらは完全に法的な知識が必要になる分野ですが、英文をそのまま正確に翻訳をしてしまうと逆に危ないという場合もあるのです。
そのような場合は、
「この内容で送ると問題になる可能性があるので、内容を変えた方がいいですよ」
という話になります。
こちらはそもそも翻訳の作業とは異質な能力が要求されますが、実務的にはかなり重要です。
そして、英文を日本語訳する際には日本語力がかなり大事になってきます。
特に、
重要な取引先に送るメール
等の場合、
より丁寧な表現
や
より格式高い表現
を使用した方が相手から
「この相手はちゃんとした人(企業)みたいだ」
と感じてもらいやすく、好感度が上がりやすいからです。
その場合は、単語の辞書からすぐに出てくるような平易な表現ではなく、より丁寧な表現を使用することになります。
例えば、
「あなたの今期の営業成績は残念でしたので~」
とそのまま訳するとこなれていない、子供っぽい表現になってしまうため、そうではなく、
「あなたの今期の営業成績は芳しくなかったことから~」
といった表現を使った方がより丁寧になります。
このような表現を日頃から頭の中にストックできている人は、翻訳の際にはすっと出てきますが、ストックできていない人だとすっと出てこない、ということになります。
すなわち、頭の中にどれだけ日本語の語彙がストックされているかによって、その人による翻訳のクオリティは決まってきます。
翻訳の作業というと、
英語が得意な人がやること
と思われがちですが、実際には、
英語力以上に日本語力がかなり重要になる
といえるでしょう。
そういう意味でも、英語を単に勉強するよりも実務経験の方が実は大事だったりします。