最近、『定年後』を始めとして、実際に定年退職をした人や定年退職を今後する予定の人向けの本を読むことが多くなりました。
というのも、経済的自由を目指している人はそのほとんどが、アーリーリタイア、セミリタイア、FIREを一度は考えたことがあると思われますし、これらはいわゆる定年退職後の年間生活者の状況と似ているのです。
異なるのは年齢、若さと実際の金融資産額といったところでしょうか。
『幸福のための資本論』にも言及がありましたが、「退職者」というのは、退職金や年金などの金融資本のみがあって、若さがないことから労働によって稼げないとして人的資本はほとんどなく、人とのつながりである社会資本もほとんどない存在とされます。
すなわち、幸福の源泉のうち、金融資本だけを持っている人ということなので、裏を返すと「金だけが頼り」という状況ということです。
時折、親の莫大な遺産を引き継ぎつつ、綺麗なマンションに働かずにたった一人で住んで孤独死する中年男性などの話を聞くことがありますが、これが典型例です。
これに社会資本が備わった人物像は金を持っている「旦那」とされ、羽振りよく人とのつながりを保てている人ということのようです。
この「旦那」状態ですと、金だけではなく人とのつながりがあることから、金融資本と社会資本があり、まあ一定程度は幸せだよねって話です。
この分類にいう「退職者」になってしまうと、危ないということは金融資本しかないのを見ると明らかなことですが、これに関しては定年退職者向けの本でたくさん指摘されています。
すなわち、今まで会社という一定の職場に頼り切りだったので、まだ健康体であっても定年後に一体どうやって稼ぐのか分からず、勤め先の高齢者雇用以外に頼る道がなかなか見つからず、人的資本がなくなってしまったり、人間関係についても職場という一定のコミュニティーに依存していたことで、退職した瞬間に何もなくなる訳です。
特に、企業戦士として働いてきた中年男性はこのリスクに陥り易いということが指摘されています。
女性の場合は職場以外ですでにコミュニティーを作っていたりしてもともと社会資本を形成しつつということができるようですが、男性でこれができている人は限られているようです。
しかも、男性の中には生活のすべてを奥さんに任せっきりの人もおり、この場合奥さんがなくなった瞬間に健康を維持するためのシステムが崩壊するので不健康になり易いことが指摘されています。
細かいことを言うとキリがないのですが、退職金でいきなりリスクの高い投資を始めると危ないよという金融リテラシーの話もあります。
だから、これから定年退職を迎える人はこれらのことを気をつけましょうねということがかなりいろんなところで指摘されています。
とすると、これらの①健康を維持するための色んな習慣、②自分の力で会社に頼らずにお金を稼ぐ方法やシステム、③職場以外での人間関係の構築や維持、④金融リテラシーについては、アーリーリタイアやセミリタイア、FIREを考えている人にとっても同様に考えるべき論点であるということでもあります。
これらの定年後のリスクについては、しっかりと若い頃からそれぞれ少しずつ対策をすれば実際にアーリーリタイアをしなくても幸せになることができると思います。
定年後のことについてはほとんどの人が直前になるまで、貯金額以外にあまり問題意識を持っていないというのが実態のようですが、若くしてアーリーリタイアなどを目指している人たちはこのような「定年後」の人たち向けの情報をキャッチしておくことはかなり重要ですし、それをするための動機が揃っている(アーリーリタイアを実際にする際に考えざるを得ない論点です)という点においてかなりの強みを持っていると言えるでしょう。
そういう意味で、若いうちにアーリーリタイアについて夢を見るというのは実際に決行するかはともかく悪くないと思います。