一般的に、
仕事を早く終わらせること=良い事、凄いこと
であるといえます。
早く仕事を終わらせることができる凄い自分に酔っている人もいるのではないでしょうか?
特にエリサーと呼ばれるような人たちは「自分は仕事ができる」という強い自負を抱いていることが多く、実際にスピーディーに仕事を処理することが得意な人も多いです。
このように、仕事を早く終わらせることは一般的に良いこととされていますが、
しかし、勤め人、サラリーマンと呼ばれる人たちの場合はちょっと気をつける必要があったりします。
それは何かというと、
①仕事を早く終わらせることができたとしても別に給与が急速に上がるわけではない
ということと、
②仕事を早く終わらせると上司からガンガン仕事を振られるようになってしまってむしろ激務から逃れにくくなり辛くなりやすい
の主に2点です。
どちらも勤め人の宿命と言えるべき問題です。
というのも、①について、自営業者の場合は、仕事をすればするほどその成果を自分の物にすることが可能なので、もともと仕事を早く終わらせることができる人はどんどん仕事を進めることによって、こなす仕事の量も増え、頑張った分収入的にも報われやすいです。
しかし、勤め人の場合は、飽くまでも雇われの立場なので、仕事の成果は基本的に勤め先に帰属し、後はその分け前をどの程度もらえるのかという話になります。
そして、実際の所とてつもない成果を上げたところで、分け前がものすごく多くなるということは稀です。
というか、ほとんど増えません。
もっと、キツいのは②のように、仕事を早く終わらせると上司から
「君は仕事を進めるのが早くて助かるよ」
などと言ってもらえることも多く、これについては評価してもらえた、嬉しい、と純粋に感じる人も多いと思いますが、
しかし、同時に
「あの人だったらこの程度の仕事はこのぐらいの時間で終わらせてくれる」
という認識を与えることになります。
そうなると、それを基準にどんどん次の仕事が振られることになります。
これが上司が一人だけだったらまだ良いのですが、
例えば、お互いに連絡を取らない関係の上司が5人ぐらい居ると大変なことになります。
すなわち、
上司A「あの人だったら今日中までにこの仕事を終わらせることが可能だろう。仕事量も20しかないし」
上司B「あの人だったら今日中までにこの仕事を終わらせることが可能だろう。仕事量も20しかないし」
上司C「あの人だったら今日中までにこの仕事を終わらせることが可能だろう。仕事量も20しかないし」
上司D「あの人だったら今日中までにこの仕事を終わらせることが可能だろう。仕事量も20しかないし」
上司E「あの人だったら今日中までにこの仕事を終わらせることが可能だろう。仕事量も20しかないし」
と5人同時に思われることも多く、合計して、
上司ABCDE「これ今日中にお願い(仕事量100)」
という超加重な要求がされる事態に発展しかねません。
そして、このような要求に現実的に部下が応えられなくなって、例えば休職したとしても、
上司A「おかしいな。あの人だったらこの量はいけると思っていたんだけどな。」
上司B「おかしいな。あの人だったらこの量はいけると思っていたんだけどな。」
上司C「おかしいな。あの人だったらこの量はいけると思っていたんだけどな。」
上司D「おかしいな。あの人だったらこの量はいけると思っていたんだけどな。」
上司E「おかしいな。あの人だったらこの量はいけると思っていたんだけどな。」
となるだけなのです。
この辺りはそこそこ長く働いている上司であれば、こういう状況になっている可能性があるという想像がついている人もそこそこ居るので一定の配慮をしてくれる人もいたりしますが、
経験がそこまで無い人だと、自分が見えている範囲までしか想像力が及んでいない(他の上司の存在が考慮されていない)場合もあったりするため、あまり配慮してもらないということになりかねません。
これは恋愛で言うと、人気のある相手にアプローチをする際に、「自分だけが頑張って相手にアプローチしているのではなく、相手にとって自分というのはたくさんアプローチしてくる大勢のうちの一人に過ぎない」という状況を理解できているのか、想像できているのかという問題に近いかもしれません。
とはいえ、さすがに、このように上司の想像力だけに頼るのはリスクが高いです。
そして、このような、仕事を早く終わらせすぎると上司から仕事がたくさん振られてしまう問題について知ってしまった勤め人の中には
「ということは、仕事は早く終わらせすぎない方がいいということだから、実はそんなに急いで仕事をやらない方がいいのか?」
等と考えがちですが、私としては一気にこのような極端な考えに傾くのは危険だと考えています。
特に、今まで月曜日の時点で「これ金曜日までにお願い」と言われていた仕事を月曜日中に終わらせて報告を上げていたのを、これからは金曜日まで実際に何もせずに放置、塩漬けにしておくという行動に出るのは安直だと思われます。
何故かというと、実際の仕事の現場の場合、上記で言うと、月曜日の時点のみならず火曜日にも水曜日にも木曜日にも「これ金曜日までにお願い」と言われるような仕事が振ってくる可能性があるからです。
このような状況があり得る場合、月曜日に来た仕事を金曜日まで完全放置するのはかなり危険で、次々に積み重なる仕事に金曜日の時点で圧迫され潰れる可能性があります。
それに長い目で見ると仕事を早く終わらせることができるようになっていたほうが能力が高まるという意味で実際には良いことが多いので、若いうちに完全にサボる方向で横着するのはオススメできません。
では、どうするのがいいかというと、
仕事の完了と仕事の報告を分離すること
です。
具体的には、上の例で行くと、
月曜日の時点で「これ金曜日までにお願い」と言われていた仕事を月曜日中に終わらせてすぐに報告を上げるのではなく、月曜日中に終わらせた仕事の完了報告を例えば木曜日などに行うことです。
一番オススメなのは、メールなどの送信予約機能を活用することです。
月曜日の時点で報告のメールを作成してしまい、そのメールの送信予約日時を木曜日にするわけです。
これによって、仕事は早く終わり、手持ちは空けることができますし、例えば火曜日や水曜日の時点で仕事に関する新しい情報が来てしまって修正を余儀なくされたとしても送信前のメールを修正するだけで済みます。
そうすると、上司の目から見て「あの人だったらこの程度の仕事はこのぐらいの時間で終わらせてくれる」の基準だけが少し下がります。
このようなやり方によって過度な期待・要求を少しずつ避けることが可能になります。
自分の能力を下げることなく、ちょっと自己表現の方法を変えるだけでも上司から見た印象を変えることができます。
また、送信予約機能は時間を空けるという意味で推敲の機会も得ることができるので、ふと「ちょっと一文を付け加えた方がいいかもしれない」と思った時に簡単に追記することもできるという安心感も得られます。
このように、根深い「仕事を早く終わらせすぎると上司から仕事がたくさん振られてしまう問題」についてもちょっとした工夫をすることによって少しずつ事態を変えることが可能です。