自分の人生について本気で考えていくと、自然と、個人だけではなく、企業についても、個人と似ているところがあると感じます。
自分の人生をどうしようか、どういう人間でありたいのだろうか、という問いはそのまま、企業における理念、この企業の理念とは何かという問いにつながります。
企業は何故この世に存在するのか、ということを考えると、個人ではできないことを集団の力で為すためと考えられます。
個人で何かを為す場合には、企業という多数人が関わるイメージとは異なり個人事業主という名称が用いられますね。
2人以上の多数人が何らかの事業目的のために様々なことを試みるのが、企業であって、2人以上の人間がわざわざ集まる以上、わざわざ集まる目的というのが極めて重要になってきます。
生活のために勤め先に属する必要がある勤め人の立場で考えると、「取りあえずお金のためにどこかに所属しなければならない」と考えがちですが、本来であれば、お金の問題は度外視され、何らかの事業目的のために人間は企業に集まっているものです。
とすれば、その企業で敢えて働く理由について本気で考察をし、その企業の経営の方針が本来の事業目的との関係で変な方向に舵を切ろうとした場合には、それについて意見ができるようになっておくことはある意味当然のことだと考えています。
このことは、私の経済的自由の達成の程度が高まってきたために初めて気づいたことです。
生活のために勤め先に忠誠を誓い働かなければならないと考えていると、どうしても「取りあえず上の人が言うことを聞くのが無難だろう」と考えてしまいがちで意見を言わない人になりがちですが、そのような人はひたすら言われた仕事しかやらない人材となっていき、いつの間にか、「いてもいいがいなくてもいい人」になってしまいます。
「いてもいいがいなくてもいい人」はいわゆるタイムワーカーであり、自分の時間を売ってお金に換えているだけの、代替可能な人材です。
このような人はどのような点で価値を出しているのかといえば、「スピード」と「コスト」です。
同じ仕事を一秒でも早く終わらせることができるように訓練を重ねて、しかも、そのスピードを維持しながらさらに多くの仕事をさばくことによって、賃金に比してより多くの利益をその企業にもたらすことが期待されています。
このような形で訓練を重ねた勤め人は確かにその企業にとって手っ取り早く利益をもたらしてくれるという価値を提供してくれるので、ありがたい存在ではあるものの、同時に「最悪いなくても困らない」存在であり、例えば年功序列で賃金が上がっていくと、コスパが悪い存在となっていくため、おそらく40歳ぐらいになると「やっぱり若手の方がコスパがいいよね」という話になりそれまで勤め先に対して忠誠を誓っていたのにもかかわらず用済みになってきます。
したがって、勤め人は上記の「スピード」や「コスト」以外の点で「替えの効かない人材」としてその企業に対して価値を提供できるようになる必要があるのではないでしょうか。
「替えの効かない人材」とは、タイムワーカー的な仕事もできる上に、その企業の事業目的や理念に即して、変化の激しい時代にも対応策を次々に考えられ、提案できるような人材ではないでしょうか。
このような人材は企業が顧客に対して提供する価値についてもしっかりと考えているため、起業したり、経営に携わる仕事にもさらにチャレンジすることが可能になると思われます。
一方で、タイムワーカーである「最悪いなくても困らない」勤め人は転職する際にも勤め人の立場以外の選択肢は基本的にとれません。そして、よほどスキルを伸ばさない限りは年齢が上がるにつれて賃金を上げないと行けないというプレッシャーを企業に与え、コスパの悪い人材としてお役御免となるでしょう。
どっちのタイプの人材になることを目指すのか、というのはその人の気持ち次第ですが、これからの時代は勤め人としての耐用年数をどうしても考慮せざるを得ないため、私としては「替えの効かない人材」になることを目指すべきだと考えています。
そのために必要なのは、その企業が顧客に提供している価値とその企業が抱く事業目的や理念を把握して、それに即してこれからの戦略を考察する力、すなわち経営方針に対して意見を出すことができる力ではないか、と考えています。
個人における、人生の目的やビジョンを定めてそのための戦略を考えるのと同じような思考を企業に対しても適用して経営方針を考察できるようにすることで、企業に対してもそのような意見を提供できるのと同時に、個人としての人生を進めるためにやるべきことを考える訓練になると考えています。
人生の目的やビジョンを定めてそのための戦略を考えるのはそもそも個人レベルでも難しいので、何度も試行錯誤する必要があると思いますが、勤め先に対しても同じようなことを試行錯誤することでそのためのトレーニングを行う事ができるので、一石二鳥でしょう。
ともかく若手だから意見をするのは無理、と決めつけるのではなく、自分の意見が通るかどうかはともかくとして試行錯誤を重ねることそのものが重要であると思います。
どうせ、勤め先を所有しているのは私のような勤め人ではないのですから、最悪他人事でもあると考えれば気が楽になるでしょう。