世の中の一発逆転ネタではよく「0やあるいはマイナスの人生だったけど、ちょっとした努力で逆転できました!」
という話を見かけることがあります。
反対に、
「もともとすごく上手くいっていたけど、さらに上手くいった」
というタイプの話はあまりありません。
これは、純粋に前者の一発逆転ネタの方が耳目を集めますし、成功している人がさらに成功しているという話はぶっちゃけそこまで面白くないし…というのもあると思います。
しかし、このようなもともと成功をそこそこしていたけど、さらに成功したという話以上にあまり聞かないのが、
「もともと成功はしていたけど、思い切って方向性を変えてしまい、しかも、全く別の分野でも成功した」
というタイプの話です。
すなわち、今までも10の利得を得ていてそのままでもおそらく良かったのにもかかわらず、その10の利得を全て捨ててでも11の利得を手に入れた人です。
例えば、医師として年収2000万円を安定して稼げるような状態に至った人が
「安定はしているけど、今後は医者もどうなるのかよくわからないし、全く別の分野、例えばエンジニアになるためにしばらく医者の仕事は辞めることにして学び直しでもしようかな。医者としての今のキャリアは捨てることになるかもしれないけど、それよりも自分はエンジニアの方が興味あるし」
と考え初めて、今の安定した年収や今後のあり得るキャリアを切り捨ててエンジニアになるための勉強をし始めると言った話です。
個人的には今後の時代においてはこのように「既にある10の利得を捨ててでも11の利得を目指す」という試みを人生の中で何度も行うことができる人が今後伸びる人なのかなと思っています。
しかし、同時に多くの人はこのような決断をするのが結構難しいのではないか、とも考えています。
というのもその人が手に入れた10の利得についても大抵の場合多量のコストがかかっているのです。
たとえば、日本の場合医師になるために医学部にまず入学するわけですが、
その時点でかなり難しいので、人によっては何浪もしつつようやく医学部に入学できるという状態になっている人もいるはずです。
しかも、医学部には6年間も費やす必要があるため、うまく時間をやりくりしている人はいいのですが、なんだかんだでそれができなかったという人もそれなりに多いはずです。
このように考えると、多くの人は10の利得、すなわち医者として年収2000万円を安定して稼げるようになるために人生のうち相当な時間を費やすという大変な苦労をしているわけです。
そこまで苦労して手に入れた10の利得を捨てるのは正直惜しいわけですよね。
しかも、新しい分野を一から学ぶために医師としての稼ぎである年収2000万円を切り捨てるのはかなり怖いはずです。
それなりにちゃんと貯蓄している人ならばまだしも、貯蓄0円の人がこれを行おうとする気持ちにはなかなかなれないでしょう。
むしろ、ブラック企業などで激務のくせに年収200万円くらいしかもらえないという嫌な状況に陥っている人の方が今の嫌な状況を切り捨てて新しい挑戦をしやすいと言えます。
1の利得を捨ててでも11の利得を目指す方が、精神的には10の利得を捨ててでも11の利得を目指すよりも遥かに楽なのです。
したがって、場合によっては、いわゆる無職や「無敵の人」の方が有利かもしれません。
じゃあ、10の利得を既に得ている人は精神的に厳しいのかと言われるとそうとは限らず、ある程度安定性を捨てずに全く別の挑戦を試みる方法自体はかなり難しいものの存在はすると思っています。
例えば、生活を今の労働収入に頼らない、経済的自由を達成してしまうという方法があります。
経済的自由を達成してしまえば、リスク許容度が高まり今の労働収入に頼る必要はないわけですから切り捨ての判断がしやすくなります。
あるいは実際にはそこまですぐにできないという人の方が多いでしょうから、今やっている業務の生産性を高めてしまい、自分の好きなことをやるための時間を創出するという方法があります。
これは、実質的な時給を高めるという考え方です。
これを上手くやれれば、せっかく獲得した10の利得を捨てることなく新たな11の利得を手に入れる努力を進めることすら可能です。
合計21の利得を手に入れる方向性ですね。
場合によっては10の利得の部分を1だけ減らして、合計20の利得にするということもあり得るでしょう。
これは、実際にはいわゆるフロー収入と言われる労働収入を事実上ストック収入に近接させてしまう方法がないかどうか模索することになるでしょう。
このように10の利得を切り捨てるのは精神的に厳しいと考えている人は、切り捨てずに新たな挑戦をすることができないかどうかまずは考えてみるのが良いと思っています。