私たちにとって「幸せ」って結局どういう状況なのでしょうか?
もちろん、人によって異なる点、見解はあると思います。
お金よりも愛が大事?
それでもやはりお金は大事?
橘玲さんの書いた『幸福の資本論』はそれを考えるに当たって重要な示唆を与えてくれていると思います。
私はこの本を読んで、「20代などの若い人が自分の幸せを目指し、幸福を追求するためには、まずは経済的自由を目指すのがいいのではないか。」と改めて感じました。
金融資本、人的資本、社会的資本に分割して幸せを考える。
『幸福の資本論』で特筆するべきは「個々人の持つ資本というのは金融資本、人的資本、社会的資本という3つに大きく分けられる」という視点を私たちに提示してくれている点です。
それぞれ簡単に以下のような意味を持ちます。
・「金融資本」=お金、株、有価証券などの金融資産です。目に見える有形資産でもあります。一番対外的にわかりやすい概念だと思います。
・「人的資本」=その人が行っている仕事やスキル、健康など、これで自己実現をする。お金を稼ぐことのできる源でもある。自己投資というのはこれを伸ばすことを意味することが多いです。
・「社会的資本」=友だち、愛情空間、共同体、絆です。お金がなくても友達や近所の人から助けてもらえるならば生きていくことができます。いざというとき頼りになる家族や配偶者などもこれにあたります。
金融資本、人的資本、社会的資本のすべてが揃っていたら幸福であるのは間違いが無いが、これらのうち2つあるだけでも幸せになることはできるようです。
1つしかないとちょっと危ない、ということになります。
使い古された小論文の課題で
「愛とお金はどちらのほうが大事だと思いますか?あなたの主張を小論文で書いて下さい」
などといった設問を見るたびに、
いや、両方あるに越したことはないでしょ・・・・・・
と思った人もいるのではないでしょうか。
上記のように3つの資本に分解した上で、それぞれの要素がそれぞれ幸せの源泉となっていると考えるとかなり整理しやすくなると思います。
幸せを追求していく上では、これら3つの資本の底上げを目指しつつも、どの資本をどのタイミングで積み上げていくべきか、今自分が優先して伸ばすべき資本はどれなのか、を考えながら戦略を立てるのが良いと思います。
これを考えるに当たって、それぞれの資本の組み合わせがどのような人物像になるのか考えてみたいと思います。
金融資本、人的資本、社会的資本それぞれにおいて、ある/ないで分類して組み合わせると、人生のパターンは8通りに分けられます。
①プア充:金融資本× 人的資本× 社会的資本〇
①プア充:金融資本× 人的資本× 社会的資本〇
典型的なのは地方のマイルドヤンキー。
カネも稼ぐためのスキルもないが同じような仲間で楽しく週末はBBQとかする人たち。
田舎だと玄関先にご近所さんが野菜を置いてくれたりしてくれるので、生活コス
トも結果的にあまりかからない。
例えば、地方で実家暮らしをしながらそのまま結婚などをすることができればお金はあまり必要ないと思います。
村社会的な世界に生きることになりそうなので、そこでの地位が高ければ一生盤石ではあると思われる。
しかし、地元での人間関係においてミスがあると村八分にされて②貧困に転落してしまう。
また、周辺に存在する財産にも頼りきっている状況なので、今は人生がうまくいっていたとしても、たとえば津波や地震などの災害によって家や集落ごと消滅した際には打つ手無しという状況に陥る可能性がある。
最近は、都会でのブラック労働に嫌気がさしてセミリタイアした後に、田舎の生活コストが安い住居を手にして悠々自適に過ごしている人も増えてきているらしいです。
しかし、金融資本が乏しい場合にはこのようなリスクもあるということを念頭に入れる必要があります。
ここから考えると、
「ブラック企業に就職してしまい、安月給で毎日が辛すぎます。資産500万円でも田舎でセミリタイアできますか?」
「資産1000万円でも実家に帰ってセミリタイアできますか?」
というネットでよく見かける疑問についても、
私が回答者だったら
「可能だと思われるし、それによって幸せを手にすることは可能だと思われる。しかし、上記のようなリスクはあります。あとはご自身で考えて下さい。」
という回答になると思います。金融資本の額としては乏しいからです。
②貧困:金融資本× 人的資本× 社会的資本×
②貧困:金融資本× 人的資本× 社会的資本×
いわゆる、貧困層の人たち。
3つの資本のいずれも有していない状態であり、およそ幸福を手にする土台を持っていない人たち。
①のプア充と異なり、頼りになる親もいなければ、助けてくれる近所の人もいないし、友達も全然いない。配偶者も恋人もいない。孤独。
しかも、お金もなければ稼ぐための仕事もスキルも無いという最悪の状況。
いわゆる、「貧困問題」で取り上げられるのはこのような人たちである。
ホームレスの人を見ると「自分とは関係ない」という感想を抱く人も多いようです。
しかし、あなたに関係ないとは限りません。
3つの資本のうち1つを持っているだけの状態の人は油断するとそれを失ったとき一気に②貧困に陥る可能性があると思います。
一度②貧困になってしまった場合、そこから這い上がるのはかなり大変です。
湯浅誠『反貧困』ではこのような人たちを「溜めがない人たち」と称していますが、お金に限らず、何も持っていないが故の貧困状態ということを示していると思います。
③リア充:金融資本× 人的資本〇 社会的資本〇
③リア充:金融資本× 人的資本〇 社会的資本〇
大企業勤務で親との関係も良好、恋人もたくさん友だちもいるといった人たち。
昭和における一つの幸せモデルと思われます。
3つのうち2つの資本を有しているだけあって幸せそうな人たちですね。
但し、金融資本はさほどなく、今を楽しんでいるので消費や浪費を繰り返し、貯金がないといったところでしょう。
このタイプは大企業で働けている間は安泰です。
しかし、人的資本に頼り気味なところがあるので、病気によって大企業を退職すれば一気に①プア充もしくは最悪の場合②貧困になりそうです。
この類型の場合、恋人や友だち付き合いのためにお金を使い切っている場合も多いので、お金を稼ぐ源泉である人的資本が何らかの形で崩されると一気にピンチになる事もあるようです。
円満に大企業を定年まで勤め上げて退職すれば老後は⑥旦那になれそうですね。
とはいえ、2019年にトヨタが「終身雇用はもう無理」と言い始め、他の大企業も早期希望退職を募っています。
今の時代、大企業で定年まで勤め上げるというのはそれ自体容易ではないと思われます。
③リア充の人物像としては上に上げたものの他には「見栄っ張りで羽振りの良い成功した自営業者」がこれに当たると思われます。こちらもいわゆる成功者ですね。
たとえ金融資本がなくても人的資本により稼げている間は人生を謳歌することができると思います。
とはいえ、人的資本が無くなってしまった場合のリスクが同時にあります。
あなたは「金ピカ先生」こと佐藤忠志さんをご存じでしょうか?
インターネットが普及する前で受験競争が激しかった1980年代、バブル期で景気が良かった時代に活躍していた予備校講師のようです。
予備校の授業はとても高価でしたが、しかし多くの人がお金を払って金ピカ先生の授業を聞いていたらしいです。
一説によると金ピカ先生は90分1コマで200万円の収入があり、年収が2億円にもなっていたようです。
1987年には秋元康さんプロデュースで歌手デビューまでしており、金ピカのアクセサリーを身につけていたことから「金ピカ先生」と呼ばれていたようです。
私はバブル崩壊後に生まれているのでこの人のことは知りませんでした。
この金ピカ先生は晩年は生活保護を受けるほど無収入になり財産をなくしてしまい、2019年に自宅で孤独に亡くなったようです。
奥さんに逃げられたのが凋落のきっかけだったと言われています。
年収2億円も出せるほどの人的資本をかつてはもっていたのにも関わらず、高級車を買うといった行動を見ているともともと金融資本を貯めることは苦手としていた人のようです。
かつての高収入の源泉である人的資本を維持できなくなり、
奥さんに逃げられるという形で社会的資本も失い、
もともと金融資本もさほどないのであっという間に②貧困に転落してジエンド
という典型的なパターンかと思います。
せめて、稼いでいたころに金融資本を貯めていれば⑦退職者になって残りの人生もある程度お金の力で楽しめたのではないでしょうか?
栄枯盛衰とはよく言ったものです。
④超充:金融資本〇 人的資本〇 社会的資本〇
④超充:金融資本〇 人的資本〇 社会的資本〇
3つの資本を全て持つという完璧すぎる人物像です。
この類型に1代だけでなるのはかなり難しいと思います。
もともと太い実家に生まれ、本人も恵まれた環境に助けられて努力を重ね、稼げるようになって自己実現を果たして、恋人配偶者や友達にも恵まれているという状況かと思われます。
運良く恵まれた環境に生まれた人は是非目指してみて欲しい類型です。
⑤お金持ち(ソロリッチ):金融資本〇 人的資本〇 社会的資本×
⑤お金持ち(ソロリッチ):金融資本〇 人的資本〇 社会的資本×
④超充には及びませんが、こちらも本人が稼ぐ力が強くかつお金も持っている、しかし、無用な人間関係を構築はしないという人物像です。
こちらもいわゆる成功者ですね。
知っている人は知っていて、しかし、テレビとかには徒に出ないような人もここに当てはまるのではないでしょうか。
私が思うにINTJ型のように一匹狼タイプの人はこのような生き方に憧れやすいのではないでしょうか。
また、今後はこのような金融資本と人的資本を特に重視した生き方は注目を集めていくと思います。
というのも、テクノロジーの発達で身近で気の合わない人と付き合いを維持するよりもネット上で気の合う人といつでも付き合うことができるということに喜びを感じる人も増えてきていると思われるためです。
かつての友達と連絡を取る方法もテクノロジーの発達により簡単になりましたし、学校や勤め先以外でのコミュニティがないという状況も同時に減ってきていると思われます。
有名な大学受験漫画である『ドラゴン桜2』においても桜木弁護士が「人が幸せになるためには金と健康さえあれば良い」という趣旨の発言をしています。
⑥旦那:金融資本〇 人的資本× 社会的資本〇
⑥旦那:金融資本〇 人的資本× 社会的資本〇
お金持ちの家に生まれてかつ友達なども多いお坊ちゃまと言ったところでしょうか。
2つの資本を持つという意味では羨ましいですね。
この属性の人は社会資本をどのように形成してきたかによって色々な方向性へと
転嫁しそうな気がします。
たとえば、大盤振る舞いをしてくれるから友達や家族ができているとすれば、お金を盗まれた瞬間に①プア充にすらなれずに②貧困に一気に転落しそう。
そのような要素がなければ金融資本がゼロになっても①プア充にはなれると思います。
この類型の人はあとは配偶者が高収入な専業主婦(主夫)も当てはまるでしょう。
もちろん、配偶者に何かあったら①プア充や②貧困になってしまいます。
例えば、豪華なランチを一緒にするママ友と友達になっているという状況であった場合、配偶者に不測の事態が生じたら金の切れ目が運の切れ目といわんばかりに一気にピンチです。
⑦退職者:金融資本〇 人的資本× 社会的資本×
⑦退職者:金融資本〇 人的資本× 社会的資本×
これは今の日本社会においてはそれなりの大企業でたくさんの退職金をも
らって定年退職しそれなりに多額の年金収入がある高齢者になるでしょうか。
例えば、体力のない中小企業勤務で定年退職しても将来への不安がありいつの間にか②貧困になってしまう虞があります。
いわゆる年金問題での議論のターゲットは⑦退職者と②貧困の2種類が主な類型になると思います。
高齢者といっても金融資本が厚くて裕福な層とお金もなく働く力も残っていない貧困層に二極化しているわけです。
また、高齢者以外ではアーリーリタイアしていて配当金生活を送っているが周囲とはあまり関わろうとしていない人もこの類型にあてはまります。
経済的自立ができるレベルの配当金しかもらっていない場合には生活がぎりぎりなのでこの属性から他の類型に転嫁することは基本的にはないと思われます。
配当金>生活費の人で経済的自由を達成しており、剰余金があるならば、友達を作るようにすれば、⑥旦那への転嫁も可能でしょうか。
年齢によっては人的資本を再び高めることも可能だと思われるので⑤お金持ち(ソロリッチ)の方向に転向することも可能ですね。
お金をだまし取られたりすると一気に②貧困へ転落するので注意する必要がありますね。
ブラック労働に嫌気がさしてアーリーリタイアを目指す人はその後の生活をどうするかということを考えていると思われます。
この⑦退職者の類型で考えるとアーリーリタイアというのは「老後を若い時まで早める」というのと同義であるということがよくわかります。
アーリーリタイアを目指すあなたがアーリーリタイアした後に1つの種類の資本のみを持つこの類型になってよいのかということを今のうちから考えておくと良いのではないかと思います。
最近の若者はお金を貯めつつ副業で生活費を稼ぐというスタンスを選択する人も増えてきている印象です。
このように自分の状況や将来設計に合わせて戦略を組み立てるのがよいと思います。
⑧ソロ充:金融資本× 人的資本〇 社会的資本×
⑧ソロ充:金融資本× 人的資本〇 社会的資本×
稼ぎまくれるが、貯蓄があまりなく友だちは少ない人たち。
ITオタクとかがイメージされるでしょうか。
この類型の人が資産形成をすると⑤金持ち(ソロリッチ)に近づいていきます。
逆に不意に失業すれば②になり一気に貧困となってしまうでしょう。
人的資本→金融資本→社会的資本の優先順位が取り組みやすい
上記の人生の8パターンを見ていると、まずは人的資本を伸ばしながら金融資本を貯めていって経済的自由を目指すのが一番取り組みやすいと思います。
一気に3つの資本を手に入れようとするのはかなり難しいので、2つの資本を獲得できれば一応の幸せは達成できそうですので、どれを選ぶのか考えるのが良いと思います。