住居に関しては、いわゆる持ち家借家論争がありますが、私は今のところ、賃貸物件において居住しています。
これは、要するに賃貸物件というサービスに対して、家賃を支払うという形でサブスクリプションサービスを受けているような物です。
私は常々生活費のうち固定費を削減できないだろうか、と考えていますし、支払っている額に対して相応の効用・サービスをしっかりと受けられているのかを気にします。
この観点で賃貸物件の家賃というサブスクリプションサービスで得られる効用は何なのか、すなわち、家賃で一体何を買っているのかを考えていきます。
①住所
まずは、住所ですね。これは持ち家でも同様に手に入ります。
「いや、住所とか当たり前じゃん」と思われるかもしれませんが、これは案外重要です。
日本では住所がないとまともなサービスを受けることが非常に困難になります。
ホームレスになると何かきついかというと、金がないからキツいと言うよりは、住所がないと社会的信用に欠ける人扱いされ、とにかくできないことが多くなるということです。
日本の貧困者向け行政支援でも、近年で言うと、コロナ禍における特別定額給付金10万円の申請の際に住所を参照されて申請書が届いたりするくらいですから、住所がないと公的支援を受けることすら困難になります。
本当は、ホームレスになって、住所を失ってしまった人に対してまずは支援することが重要になるはずなのですが、これがそもそも難しいわけです。
マイナンバーがあるのだから住所がなくても何とかしてくれよと正直思うところではありますが、まだなかなか進んでいないようです。
例えボロ屋であっても、家を借りることで、住所を手に入れることができるため、これが第一にして極めて重要なメリットです。
近年では、ネットカフェ難民の人に向けて住所を付与するサービスがあったようですが、緊急事態宣言下で一時的に営業自粛となり、たくさんのネットカフェ難民の人たちが追い出され、一時的にとはいえ住所を失ったと聞きますが、これは地味に大変なことだと思います。
変わったところでは、銀行融資の際に地味に審査で住所などは見られているようです。個人で融資を前提とした事業などをやる予定がある人はそのようなところもチェックしておく必要があると思われます。
総合的に考えると、住所という形の基礎的な社会的信用力をサービスによって買っているわけですね。
②職場までの距離(時間)
今まで、都心の賃貸物件が人気だったのはこれが大きいでしょう。
単純に、通勤時間というのは無駄ですので、職場近くの賃貸物件に住むことによって、お金で通勤時間を購入することができるでしょう。
大抵の人は、勤め先に週5日、多い人は週7日(悲しいことに、意外とあるんですよね、これが)も勤め先に通わざるを得ないのですから、たとえ部屋が狭くても職場に近い賃貸物件というのは極めて価値が高いです。
また、終身雇用で長年同じ場所に勤め上げる予定の人は、持ち家という形で職場に近い場所に家を買ってしまうのはありでしょう。
しかし、大抵の人はもはや終身雇用が期待できないのですから、勤め先の場所は人生において何回も変わりうる物と思っていた方が良いのではないでしょうか。
勤め先自体が変わってしまう場合もありますし、勤め先の方針が変わってオフィス自体が移転してしまう場合もありますし、転勤によって遠くに飛ばされる場合もありますし、とにかく、ほぼ毎日通わないと行けないような場所が変わりうる場合には、安易に持ち家を買うのはやめておいた方が良いと思われます。
これと比べると、賃貸物件の家賃というサブスクリプションサービスを使用すれば、このような変化に応じて適切な場所に引っ越しをすることが可能になるので、機動的な動きが可能になります。
例えば、もともとの勤め先の近くで持ち家を家族用に買っておいて、その後1人が単身赴任となってしまった場合、赴任先で新しく住所を確保しなければいけなくなるため、もとの持ち家に住む人数が減ることによって、コスパは落ちます。
しかし、もとから賃貸物件に住んでいたら、1人に動きが生じてもスイッチングが簡単に可能になり、コスパを保つことは可能です。
もっとも、この、②職場までの距離(時間)についてはリモートワークがもっと普及すれば、賃貸物件の家賃というサブスクリプションサービスを使用して通勤時間を家賃で買う必要がなくなるので位置づけは下がると思われます。
通勤時間に人生を左右されたくない人は積極的にリモートワークが可能な職場を狙うべきでしょうね。
③休日のお出かけの際の距離(時間)
私の勤め先のように、週5日どころか週7日も労働する必要があるような人はついつい忘れがちなのがこれです。
ワーカホリックになっていると、ついつい仕事のこと以外を考えなくなってしまいますが、休日にどこに外出するのかという視点でもどこに住居を持つのか、というのは重要になります。
サーフィンが趣味の人は海辺に住居を構えるべきですし、温泉に行くのが好きな人は温泉街の近くに住居を構えるべきです。
労働時間以外のやりたいことがある人の場合は、このように休日における移動距離、時間を買うという意識も重要になります。
そして、こちらも職場と同様に、
「趣味や、やりたいことはその都度増えたり、変わる可能性がある」
ということを念頭に置く必要があります。
仮に、突然、札幌に行きたくなったり、仙台に行きたくなったり、新潟に行きたくなったり、金沢に行きたくなったり、京都に行きたくなったり、博多に行きたくなったりetc...という形でその都度旅行に行きたいと思った場合に、そのような場所に行きやすい場所に住居を構える必要があると思われます。
また、新しい経験をしたいと思ったときに、アクセスしやすいところにいないと行動力が落ちてしまい、経験値を積める量も減りがちです。
そのように考えると、やはり交通の便が良いところが良いと言うことになりますし、アクセスの悪いド田舎に住むべきではありません。
もっとも、こちらも、家の中でも楽しめる趣味が増えてきていることや、VRの発展に伴ってわざわざ現地まで行く必要がないという状況になることも考えられます。
こちらは職場のリモートワークよりもそれなりに時間がかかるような気もしますが、だんだんあらゆるサービスが家の中で完結するようになるだろうなと考えています。
いわゆる、スーパーやデパートに行くような用事については既にAmazonなどに代替されつつあるので、日常的な娯楽施設に対する考慮はもはやしなくて良いと思っています。週1回くらい外、都心に出ることができるくらいで十分でしょう。
したがって、この観点からもすぐに都心に出ることはできるが、都心に近すぎる必要は無いというような郊外でもある程度生活できると思われます。
変化に対する対応力を家賃の支払いによって買う
ってことは、持ち家にしても問題ないのでは?という話になるかもしれませんが、今は時代の過渡期と言うことを考えるとやはり決断するのは早計というのが私の考えです。
だんだん世の中は変わっていきますが、逆に言えば少しずつしか世の中は変わらないのが基本ですから、その変化に応じた対応力を持つという視点から、お金をさほど持っていない人はやはり賃貸物件にしておいた方が良いと考えています。
もちろん、もう色々決断してしまって動いてしまうのも良いと思いますが、これはリスクをどこまで許容できるのかという問題だと思います。
お金を持っている人は持ち家だろうが何だろうが変化に応じた手を打ちやすいので、賃貸物件でもいいですし、持ち家でも良いという結局夢のない話になってしまいますね。
いつ、何があったら、賃貸物件から持ち家に切り替えるべきなのか、しっかりと効用を考えておきたいと思います。