以前、下記のキャッシュレス財布を紹介した際に読者の方から以下のような指摘をいただきました。
いつもブログ見ています!
少し気になったのでコメントさせてください。
鍵と身分証明書(住所がわかるもの)を一緒に持ち歩くのは防犯という観点ではNGだと思います。
落としてしまうと、家に入られてしまうので。。
頂いたコメントより抜粋
なるほど。。。。
正直なことを言うと、今までの人生で持ち物、貴重品を紛失するということは基本的になかったので、この辺りのことは真剣に考えていなかったですね。
そういうわけで、このような具体的事例に着目した持ち物紛失リスクを改めて分析してみました。
結論から述べると、「私の場合」は、
「鍵と住所の記載のある身分証明書を同時に紛失するリスク」は普段の生活状況から容認できるため、キーポーチminiにこれらを同時に入れるという運用は採用可能と考えています。
まず、リスクマネジメントに関する大筋の考え方、フレームワークを考えます。
一応ですが、リスクマネジメントというのは、ビジネス用語のようです。
リスクマネジメント(risk management)とは、「想定されるリスクを事前に洗い出し、リスクの発生による損失を回避し、万が一リスクが発生した場合の被害を最小限に抑える」ための経営手法となります。
そして、「リスクマネジメント」は大筋、事前の策としてのリスクアセスメントやリスクヘッジと、リスクが顕在化してしまった後の事後策としてのクライシスマネジメント(危機管理)に大別できます。
「リスクアセスメント」とは、事前に職場の潜在的な危険性や有害性を見つけ出し、あらかじめ除去や低減するための手法で、「有害性の特定・リスクの見積り・優先度の設定・リスク低減措置」の4つのプロセスからなり、実際にリスクが発生した際の対処法は含まれていません。
「リスクヘッジ」とは、元々は金融業界で使われていた言葉で、起こり得るリスクのレベルをあらかじめ予測して、それを避けるために事前に対策を図ることです。例えば、プロジェクトの案を1つに絞るのではなく、複数用意することや、個人があらゆる保険に加入する行為も、リスクヘッジに含まれます。つまり想定されるリスクに対して、様々な対策や手段を図るという意味を持ちます。
一方で「クライシスマネジメント(Crisis Management)、危機管理」は実際に生じてしまったトラブルや問題に対して、事態がそれ以上悪化しないように状況を管理する手法です。
つまり危機管理は、マイナスの局面から少しでも早く元の状況に戻すための手法と言えます。
今回指摘をいただいた点は、「鍵と住所がわかるものを同時になくすと防犯上良くない」ということなので、リスクアセスメントの視点から、これらを別々に保管や所持するという措置を取った方が良いのではないかという趣旨だと考えています。
これはリスクが顕在化した際に損失が出てくると考えられる物なので、いわゆる純粋リスクと呼ばれる物になります。
一方で、金融商品への投資のように、利益も損失の可能性もある場合を投機的リスクと呼んでいるようです。
基本的には、
純粋リスクの部分を上手く管理できるようにする→投機的リスクを管理する
という順番を意識することが重要になりますね。
資産形成の文脈では、「投資よりもまずは貯金をできるようになれ」と言われることが多いのですが、
これも、まずは貯蓄をできるようになることによって金融資産を貯めて、金銭によって純粋リスクを管理できるようにならないと投機的リスクをマネジメントすることに手を出すのは大変だからあまりオススメしないということを意図しているのだと思われます。
さて、まず最初に考えるべき事は、「鍵と住所がわかるものを同時になくすと防犯上良くない」とは結局どういう意味か、
すなわち、どのようなリスクを具体的には想定するべきなのか、ということです。
思うに、
①鍵と住所が分かる物(身分証明書)を同時に同じ入れ物に入れた状態でどこかに落としそれを誰かに拾われてそのままパクられるor手元から盗まれる
↓
②両方とも所持した人物は、住所の位置が把握できるため、鍵を用いて私の住居に侵入される
↓
③私の住居内で、何らかの被害が生じる
というのがおおざっぱな流れになりそうです。
まず、①についてですが、このリスクが顕在化した場合、この時点で、私は財産的損害を負う可能性があります。
すなわち、鍵を紛失したら、鍵を交換するための費用約2万円がかかると思われますし、
運転免許証を紛失した時点で、運転免許証の再交付の手続きが必要になりますので、おそらく再交付手数料として3000円以上はとられそうです。
後はもろもろの小銭や札束が盗まれる可能性もありそうですね。
因みに、①を実際にやる場合には、占有物離脱横領罪、遺失物横領罪、窃盗罪などの刑法上の犯罪が成立する可能性があります。
次に、①から②にリスクが転じた場合、②のリスクまで顕在化した場合には、私の住居に勝手に誰かが進入するという被害が生じることになります。
これは金銭的評価が難しいところですが、住居侵入罪という刑法上の犯罪が成立しますし、私の自宅というプライバシー領域が侵犯されるため、そういう意味での損害は生じると思われます。
強いて金銭的に評価するとしたら、誰かが私の住居にいる期間は私自身が家に帰りにくいという状況が生じる可能性があるので、その間のホテルの宿泊代などが実際の被害額として生じる可能性があります。
そして、③のリスクまで顕在化した場合ですが、これは色んな被害があり得ます。
とはいっても、大きくは2つになります。
まず、家の中にある財物が盗まれるなどの金銭的被害
次に、私の生命、身体、健康などが害される身体的被害
となります。
ここはバリエーションが想定されるところではありますが、色んな刑法上の犯罪が成立する可能性があります。
以上がリスクが顕在化した場合に考えられる損害となりますが、
次に、それぞれのリスクの大きさについて考える必要があります。
リスクの大きさというと曖昧なイメージがありますが、一般的には以下のような考え方となります。
リスクの大きさ=リスクの顕在化したときの影響の大きさ×リスクが顕在化する確率
したがって、リスクの大きさについて考えるためには、まずリスクの顕在化したときの影響の大きさについて考える必要があります。
そして、ここで確認するべき事というのは、
少なくとも私の中での損害に対する評価の付け方としては、
私の身体に対する被害>>>>>>>(越えられない壁)>>>>>金銭的被害
という方向付けに原則としてなるということです。
そもそもの話、例えば自分の生命が奪われるというのが私にとっての最大レベルの損害です。
いわゆる、殺人とかですね。
それ以下の後遺症が残るレベルの身体被害がそれに続きます。
それに劣後する形で金銭的被害の評価が為されます。
この辺りの評価の付け方は人それぞれだとは思われますが、少なくとも私の感覚では、
私の身体に対する被害>>>>>>>(越えられない壁)>>>>>金銭的被害
という序列が原則論になるということになります。
この辺りはどうしても個人の感覚や価値観が出てしまう物だと思われます。
極端な例を挙げると、金銭的被害が2億円を超えてしまうよりも、切り傷の方がマシと考えることもできますからね。
私の場合にどうして身体に対する被害>>>>金銭的被害という価値観になるのかと強いて問われれば、現状では、私自身が保有する人的資本の自己評価が、私自身が保有する金融資本に対する自己評価よりも圧倒的に高いからだと思います。
すなわち、健康さえ保てば金銭についてはなんとか稼ぐことも可能ですし、金にならなくても色んな活動が可能なので、逆に言えば、多少の金をかけてでも健康を守る必要があるという認識です。
以上の私の価値観を前提としてしまいますが、このように最大リスクを考えていきます。
見ての通り、③までのリスクが顕在化すると最悪私の生命が奪われるという意味で損害は大きくなりそうです。
次に、おおざっぱにリスクが顕在化する確率を考えます。
まず、①についてですね。
冒頭でそもそも私は持ち物において貴重品を無くした経験がないと書きました。
なぜ、私の場合はそうなのか?
ということを改めて考えてみましたが、
それはほとんどの人がスマホをなくすことがさほどないのと同じ理由だと思われます。
すなわち、スマホのように毎日使用している物の場合、無くなってしまうとすぐに気づくのですぐに心当たりのあるところを探し始めるわけですね。
ちなみに、同じスマホでも2台以上持っている人の場合は、片方を紛失する人が時折出現するようです。
おそらく、基本的には一台のスマホをメインで使用していることから、もう片方に対する注意がさほど向かなくなることが原因だと思われます。
手元から消えてしまったことに気づきにくくなってしまうわけですね。
以前の記事で私は財布の中で1ヶ月以上使用していないものは基本的に持ち運ばないようにしたいと述べているわけですが、
逆に言えば、私は原則として毎日使用するようなものしか持ち運ばないという意思決定基準を既に持っているということです。
そして、スマートロックのようなものを別途採用している場合は話が別かもしれませんが、鍵のように毎日使用することが想定されている物を一つのポーチの中に入れる場合、ポーチが無くなったらすぐにそれが無くなったことにすぐに気づくことになります。そして、心当たりのある場所をすぐに探し始めることになるでしょう。
また、よく物を忘れやすい、落としやすい人は何故か物を置くべき場所の定位置を予め定めていなかったり、必要以上の物を所持している人にも多い気がします。
私の場合は、断捨離をし続けながら、どの物が自分にとって必要で、必要だとしたらどの頻度で必要なのか?それは何故か?という点について常に考えてそれに応じて周辺環境を常に見直して自分のコンセプトに沿ってデザインし続けているので、自分の物がおおよそどこに存在する可能性が高いのか、という脳内地図のようなものがなんとなくできあがっている気がします。
なんとなくで物を買ったり、なんとなくで物を置いたりすることがおそらく平均的な人よりは少ないと思います。
毎回の行動に何かしらの理由が毎回存在するわけですね。
だからこそ、私の場合は物を無くす頻度ももともと低いのだと思います。
次に、物を落としたとしたらすぐにパクられるのか?と言われるとそれも意外と微妙なところがあります。
私が住んでいる場所、生活圏の治安の問題もありますが、交番などに届けてくれる人も結構いますからね。
私の場合はそもそも貴重品を落としたことがないのでそこまで実感はないものの、治安が良いところに住んでいると何事も無く物が戻ってくることが結構あるようです。
逆に言えば、治安が比較的悪い場所を生活圏としている人は警戒した方が良いかもしれません。
海外旅行に行く場合は、場所によっては背負っていたリュックサックを丸ごと目の前で持って行かれたなどという話が出てくるくらいなので、鍵と身分証明書の保管場所を分ける措置以上の厳重な対策が求められそうです。
以上のように考えていくと、私の場合は、普段の生活を続ける限りは①のリスクが顕在化する確率がそこまで多くはなさそうです。
次に、②のリスクが顕在化するリスクについて考えていきます。
①が起こったのであれば、②が起こる可能性はそれなり高そうでは?と思うかもしれません。
しかし、ポイントは①のリスクの顕在化が②のリスクの顕在化まで転化するまでにはタイムラグが生じる可能性があるという点です。
どういうことかというと、極端な例を挙げると、私が九州まで旅行に行ってそこで鍵と身分証明書を両方とも紛失して何者かにパクられたとしましょう。
私は都心に住んでいるため、②のリスクが顕在化する場合、すなわち私の住居に侵入するためには、そこから鍵を所持している人物が何らかの方法で都心まで来たり、鍵を都心にいる人物に送るなどの措置を取る必要があります。
この間に自ずとタイムラグが生じるのです。
もちろん、逆に極端なパターンを言うと、私の住居の目の前で鍵と身分証明書を同時に紛失すると、①→②へのリスクの転化のタイムラグはほぼなくなります。
他のパターンは、鍵や身分証明書を手に入れた人物が別の人物に転売をする可能性がありますね。
これも①→②へのタイムラグが生じてしまう原因です。
この①→②へのリスクの転化のタイムラグが存在する可能性があるということはどういうことかというと、②のリスクへの転化が起こる前に、①のリスクが顕在化してしまった後の事後策としてのクライシスマネジメント(危機管理)の措置を取ることが可能になります。
具体的には、①のリスクが顕在化してしまったことに気づいたら、鍵を交換してもらうように依頼する、警察に届け出るなどの様々な事後的な措置が可能になります。
鍵を交換してもらうまでの日数には現実的には時間がかかってしまう可能性がありますが、②のリスクが顕在化する前にクライシスマネジメントの措置が功を奏する可能性があります。
次に、③のリスクの顕在化についてですが、②が起こった場合は③が起こる可能性はそれなりに高そうです。
②→③へとリスクが転化する際のタイムラグもあまりなさそうです。
もっとも、可能性が高いのは金銭的被害の方だと考えられます。
どういうことかというと、家にある家財はどのタイミングで住居に侵入しても盗むことが可能ですが、私の身体的被害に関しては私がその住居にいない限りは基本的には生じません。
身体的被害についてはかなりタイミングを選ぶ犯罪になります。
すなわち、②のリスクが顕在化した後でも、①に気づいた時点で、私自身が家に帰らないという選択をすることによって②のリスクが顕在化してしまった後の事後策としてのクライシスマネジメント(危機管理)の措置として③のリスクのうち身体的被害については顕在化させないような措置を取ることが可能です。
そもそも、家の鍵をどこかに落とした時点で家に帰れないですからね。。
そして、一方で、③のリスクが顕在化したときの金銭的被害についても意外とたいしたことはありません。
まず、家にある物ですが、そもそも私の場合は家に物がほとんどありません。
普段からありとあらゆるものを断捨離していますからね。
強いて言えば、一番高価なのは、定価15万円したドラム式洗濯機になるでしょうね。
まあ、大きいですし重いので外に運び出すのは一苦労です。
引っ越し業者の方であっても2人以上の人員が必要です。
しかも、近くにコインランドリーが存在しているので正直ドラム式洗濯機が必要不可欠な家電なのかは私の中ではむしろ現在では疑っているところです。
となると、基本的に狙うべきは、いわゆる貴重品ということになりそうですが、
まず、私の場合、通帳付きの銀行口座が今ほとんどありません。
絶滅危惧種です。
通帳不要の銀行口座がメインですし、通帳付きの銀行口座は整理して捨てる予定で絶賛断捨離中となっているので、現在のところほぼ残高もありません。
もっといえば、いわゆる印鑑も家の中には置かないようにしています。使用頻度が低い上に盗まれたら危険ですからね。
というわけで、印鑑も盗むことができません。
もちろん、家の中には現状現金は全くありませんし、インターネットの各種パスワードも別に紙の形で残していません。
家の中にあるもののメインは防災関係の物なので、それらは何らかの価値はあるかもしれませんね。
一応、クレジットカードが他人に勝手に使われるといった事態も考えて、私の場合は実はカードの限度額は普段から極限まで下げています。
家計簿を逐一付けているおかげでどのあたりまで限度額を下げても問題なく行けそうなのかというのを把握しているので、わりとすぐに決めることができるわけです。
事後策になってしまいますが、カードも使用停止することができますしね。
因みに、仮に③のリスクが顕在化したとしても空き巣等の被害で大切なものが盗まれてしまったら、火災保険の盗難補償で家財の契約があれば補償を受ける事ができます。
もっとも、制約はあるようで、例えば、現金は20万円が上限となり、高価な宝飾品や美術品などは一定金額までしか補償してもらえなかったり、事前に申告が必要であったりします。
どのような補償内容になっているか、契約している火災保険の補償内容を確認しておくことが良いでしょう。
保険金の請求ができる期間も制限されていることもあったりするので気をつけましょう。
因みに、実際にやるかどうかはわかりませんが、私の場合はもともと10年に10回も引っ越しするくらい引っ越し魔の部分があるので、
今の賃貸物件からあっさりと引っ越ししてしまって個人情報の流出も含めた全ての顕在化されたリスクをリセットしてしまう措置も可能だと考えています。
まあ、お金がかなりかかるので実際にやる可能性は低いとは思っていますが。。。
以上のように考えていくと、
リスクの大きさ=リスクの顕在化したときの影響の大きさ×リスクが顕在化する確率
とすると、③のリスクまで顕在化したとしても、リスクの顕在化したときの影響の大きさは、金銭的な支出は一定程度伴ったとしても、普段の予防策などを講じまくって下げることが可能ですし、
リスクが顕在化する確率についても、そもそもの①の顕在化確率が私の場合はそこまで高くないといえる上に、事後的な措置で③の顕在化確率までを下げる措置は実は可能だということが分かると思います。
私の状況とこれを読んでいる人の状況は違うところが多々あるかもしれませんし、そもそもそこまで金銭的支出を容認できないよという人も多いとは思いますが、
このような考え方を参考にして、自分自身の価値観や周辺状況を見直して自分はこのリスクに対してどう考えるべきなのか??とリスクを分析していくと良いのではないでしょうか??
私の場合は実際の所、生活圏の治安が恵まれているという要素がかなり大きいと思います。
因みに、ここまで長々と①→②→③のリスクの顕在化について書いてきて今更これをいうのもどうかと思われますが、
実際の話、住居侵入+窃盗という犯罪が行われるのは、
鍵の無施錠
がなされている家だそうです。統計上半分くらいはこのような事例だとか。
次に多いのは窓を破られて侵入される場合ですね。
すなわち、鍵を落としてしまってそれを拾った人物が家の中に勝手に入ってきて物を盗んでいく可能性よりも、たまたま鍵を閉め忘れてしまった家の中に入ってくる可能性の方が現実問題として高そうですね。
上の方で、
「もちろん、逆に極端なパターンを言うと、私の住居の目の前で鍵と身分証明書を同時に紛失すると、①→②へのリスクの転化のタイムラグはほぼなくなります。」
などと書いていますが、強いて言えば、このようなシチュエーションと無施錠というのは状況は近いのかもしれないです。
というわけで、防犯対策をしたかったら、まずは、
戸締まりはしっかりとした方が良い
家を出た直後の鍵の閉め忘れに最も気をつけるべき
ということも今回改めて考えてみて分かりました。
参考になれば幸いです。