財産債務調書制度とは?
あなたは財産債務調書制度をご存知でしょうか?
財産債務調書制度とは、一定以上の所得や財産を持つ個人に対して、その財産や債務の状況を国に報告することを義務付ける制度です。
この制度は、主に富裕層と呼ばれる人をターゲットとし、税の公平性を確保し、脱税を防ぐことを目的としています。
それゆえに、
「お金持ち」
なるものにあなたがこれからなろうとする場合、この制度の事を知っておくことは非常に重要です。
そして、この制度の対象者は、いわば、
「国が認めた将来を約束された金持ち」
と言えるでしょう。
すなわち、
「未だお金を持っていないだけの金持ち」
もここに含まれるのです。
なぜ「国が認めた将来を約束された金持ち」なのか?
この制度の対象となるのは、ものすごく乱暴に言えば、高額所得者や多額の財産を持つ人々です。
つまり、この制度の対象者になるということは、ある一定以上の経済力を持っていることを国が認めているようなものです。
なぜこの制度が「将来を約束された金持ち」と結びつくのか、その理由を詳しく見ていきましょう。
報告義務が生じる条件
国税庁のホームページ(https://www.nta.go.jp/)によると、ざっくりと言えば、令和6年分の財産債務調書の提出義務者は、以下のいずれかに該当する個人とされています。
- 所得基準と財産基準の両方: 所得金額が2,000万円を超え、かつ年末時点での財産価額が3億円以上、または有価証券等の資産価額が1億円以上ある人
- 財産基準のみ: 所得金額が2,000万円以下であっても、年末時点での財産価額が10億円以上ある人
普通のサラリーマンが財産債務調書制度の対象になりにくい理由
- 所得基準: 一般的なサラリーマンの所得は、2,000万円を超えることは稀です。そして、重要なのは「所得」です。「年収」ではないことに注意が必要です。しかも、「世帯年収」でもありません。すなわち、パワーカップルが世帯年収2,000万円を達成したところでこの条件を満たすわけではないということです。この所得要件のハードルの高さが財産債務調書制度が知られていない最大の理由かもしれません。
- 有価証券の保有: 純金融資産であっても、総資産であっても、いずれにしろ、1億円以上の有価証券を保有しているサラリーマンは、そもそも、ごく一部でしょう。そもそも、「億り人」は少数派なのです。多くのサラリーマンは、有価証券ではなく、不動産を保有していることが多い他、住宅ローンや教育費など、様々な支出が資産形成にあたって余儀なくされており、まとまった資産を形成することが難しいのが現状です。
早すぎる相続財産の申告の意味
財産債務調書は、相続税の申告時に向けて重要な役割を果たします。
そもそも、相続税の申告に際しては、相続財産の評価額を正確に算定するために、被相続人の財産状況を把握する必要があるからです。
つまり、対象者が財産債務調書をきちんと作成しておくことは、将来の相続に備え、スムーズな手続きを行うための早すぎた下準備とも言えます。
逆に言えば、若いうちから自身が逝去した際の相続税を意識せざるを得なくなった人たちは、財産債務調書制度についても意識を向けざるを得ない状況でもあるのです。
有価証券の運用による財産増大の将来性
- 株式などの長期保有: 株式などの有価証券は、長期的に見れば、物価の上昇や企業の成長に伴い、その価値が増加する可能性があります。1億円程度の有価証券を保有している人であっても、長期的にはその資産額が10億円に達することが十分に考えられます。
- 複利の効果: 投資で得られた利益を再投資することで、複利の効果により資産は雪だるま式に増えていきます。
- 不動産投資: 3億円以上がその対象となる不動産投資も、財産を増やすための有効な手段の一つです。不動産価格の上昇や家賃収入により、資産価値が増大する可能性があります。
なぜ1億円以上の有価証券保有者も対象なのか?
財産債務調書制度は主に将来における相続税等をしっかりと補足することがメインの趣旨となっていますが、何故、1億円程度の有価証券保有者、かつ、所得2000万円以上の者もその対象となるのでしょうか?
1億円以上の有価証券を保有しているということは、ある程度以上の資産形成を行っており、将来的な資産のさらなる増大が期待できることを意味します。
それに加えて、所得も2000万円以上あるとあっては、そこから保有資産が減る可能性よりもむしろとんでもないスピードで増えていくことが容易に想像がつきます。
国としては、このような人々の財産状況を早期に把握し、税収の確保に繋げたいと考えていると考えられます。
この制度が知れ渡っていない理由
- 対象者が限られている: 財産債務調書制度の対象者は、ごく一部の高額所得者や多額の財産を持つ人に限られます。単に長期にコツコツと資産形成を行っただけの「億り人」ではこの制度の対象者になることは難しいでしょう。また、様々な手を尽くすことによって対象から外れるように工夫することも可能でしょう。
- 複雑な制度: 財産債務調書の記載内容や提出方法など、制度自体が複雑であり、一般の人には理解しにくい部分があります。
- 税理士への相談: 高額所得者や多額の財産を持つ人は、税理士に相談することが一般的であり、一般の人にはあまり知られていない可能性があります。
まとめ
財産債務調書制度は、単なる税務手続きにとどまらず、経済的な成功や社会的な地位を象徴するものとして捉えられる側面があります。
この制度の存在は、お金持ちになることを目指す人々にとって、より高度な資産管理や社会貢献が求められることを意味しています。
**「国が認めた将来を約束された金持ち」**という言葉は、財産債務調書制度の対象者に対して、経済的な成功だけでなく、将来の計画性、社会的な責任といった多岐にわたる側面を示唆していると言えるでしょう。
今後の展望
近年、相続税の基礎控除の改正など、相続税に関する制度改正が頻繁に行われています。
財産債務調書制度も、これらの制度改正の影響を受ける可能性があります。
相続税に関する知識を常にアップデートし、専門家と連携することで、より適切な相続対策を講じることができます。