自営業や起業は、会社員とは異なり、自分の裁量で仕事を進められる自由さがあります。
しかし、その自由は諸刃の剣であり、状況によっては
「廃業したくてもできない」
「逃げたくても逃げられない」
というリスクを抱え込むことになります。
これは、退職届一つで比較的容易に状況を変えられる会社員にはない、自営業者特有の重圧です。
自営業や起業について
「そもそも、軌道に乗るのか?」
と心配する人が多いですが、軌道に乗ったように一見見えても、その後にもこのような問題が生じ得ます。
このようなリスクは、事業を始める前から十分に認識し、対策を講じておく必要があります。
具体的な事例を交えながら、そのリスクと対策について考察します。
1. 廃業したくてもできないリスク
- 事例:
- 多額の借入金: 銀行融資や個人保証で多額の借金を抱えている場合、廃業しても返済義務は残ります。自己破産という選択肢もありますが、社会的信用を失うなど、その後の人生に大きな影響を与えます。
- 長期契約: オフィスや店舗の賃貸契約、リース契約など、長期契約を結んでいる場合、中途解約には違約金が発生します。事業がうまくいかなくても、契約期間中は固定費を払い続けなければなりません。
- 在庫の抱え込み: 大量の商品在庫を抱えている場合、廃業時にそれらを処分する必要があります。しかし、売れ残りを抱えたままでは、現金化できず、保管費用もかさみます。
- 従業員の解雇: 従業員を雇用している場合、解雇には法的な制約があり、予告手当の支払いや、場合によっては解雇無効を訴えられるリスクもあります。
- 対策:
- スモールスタート: 最初から大きな投資をせず、小さく始めることが重要です。事業が軌道に乗るまでは、固定費を極力抑え、リスクを最小限に抑えましょう。
- 契約内容の精査: 長期契約を結ぶ際は、中途解約の条件や違約金について、事前にしっかりと確認しましょう。
- 在庫管理の徹底: 過剰な在庫を抱えないよう、需要予測に基づいた適切な仕入れを行いましょう。
- 専門家への相談: 弁護士や税理士などの専門家に相談し、法的なリスクや税務上の注意点について、事前にアドバイスを受けましょう。
2. 逃げたくても逃げられないリスク
- 事例:
- 顧客との契約: 納品やサービスの提供が完了していない契約がある場合、一方的に放棄することはできません。顧客からの損害賠償請求や、信用失墜につながります。
- 連帯保証: 他人の借金の連帯保証人になっている場合、主債務者が返済できなければ、自分が返済義務を負います。
- 訴訟リスク: 顧客や取引先とのトラブルが訴訟に発展した場合、時間的、精神的、金銭的な負担が大きくなります。
- 対策:
- 契約書の作成: 顧客との契約は、必ず書面で交わし、責任範囲や納期、支払い条件などを明確にしましょう。
- 連帯保証の回避: 安易に連帯保証人になることは避けましょう。
- 保険の加入: 事業活動における賠償責任保険など、リスクに備えた保険に加入しましょう。
3. 会社員との比較
会社員は、雇用契約に基づいて働いているため、問題があれば退職という選択肢があります。
もちろん、退職にも様々な手続きや影響がありますが、自営業者に比べれば、身軽に状況を変えることができます。
一方、自営業者は、事業の責任を全て自分で負うため、誰にも仕事を投げることができないという状況に陥る可能性もあって、簡単に逃げ出すことはできません。
この違いは、自営業という働き方の自由さと表裏一体の関係にあります。
結論
自営業や起業は、大きなやりがいと可能性を秘めていますが、同時に、会社員にはないリスクも伴います。
これらのリスクを事前に理解し、適切な対策を講じることで、より安心して事業に取り組むことができるでしょう。