様々なビジネス系の書籍を読んでいると、
「いざというときのために、自分の市場価値を高めておきましょう。そのために、自分がどの程度市場から評価されているのか探ってみましょう」
等と言ったことが書いてあることが多いです。
これは別に間違っていることが書いてあるとは思っていません。
すなわち、今働いている勤め先がなくなっても、別に勤め先に雇ってもらえるような力がある人はそのような力が無い人に比べれば安全であることは間違いではないからです。
そりゃあ、そのような力が無いよりはあったほうがマシですよね。
しかし、この手の話を読んでいると、私としては、
そもそも、転職市場で価値が高くなるよりも、いつでも一人で独立できるだけの基盤を既に整えている人の方が遙かに安全ではないだろうか
などと思わずにはいられません。
よく見る、市場価値を高めようという言説は、
「普通の人は転職市場を通じて勤め先を変えるしかない」
という暗黙の前提が裏にありそうです。
「転職市場」という言葉もまた絶妙です。
「転職市場」という表現は自らの労働力を商品化して他の勤め先に売りに行くことを暗に示していますよね。
そして、その自らの労働力という商品の品質の説明によく必要とされていることが「職務経歴書を充実させましょう」という話です。
就活の時もそうですが、少ないデータ量で自分の力を表現することが可能な職務経歴書というのは、お互いに相手の印象をイメージするために時間をとられないため非常に便利です。
いわゆる、「話が早い」ということですね。
経歴が良ければ書類で切られずに面接まですんなりいくことが容易でしょう。
何故、このような「話の早さ」が求められがちなのかというと、
「お互いに相手のことをよく知らない」
「相手のことをこれから逐一よく知るための時間をわざわざ投入できない」
という辺りの事情があります。
そして、転職市場を通じた転職と全く違うことをやっているのが、「コネ採用」「紹介による採用」「縁故採用」と呼ばれる物です。
これらは、採用活動をしようと思った時点で、「お互いのことをある程度知っている」という状態になっています。
お互いのことをある程度知っているからこそ、安心して採用することができます。
転職市場を通じた転職というのはこのような安心感が最初の時点でないため、労働力の品質の良さを簡単に実証できる「充実した職務経歴書」が求められがちなのです。
私としては、書籍や雑誌などによくあるような
「転職市場を通じて勤め先を変えるしかない」
という暗黙の前提を破ったり、思い込みを無くすことが重要と考えています。
もし、勤め先を変えようなどと思った場合、「コネ採用」「紹介による採用」「縁故採用」と呼ばれる物からできるように優先的に取り組むべきです。
何故ならば、そっちの方がお互いに安全だからです。
最近は、転職市場が盛り上がっていると聞くことがありますが、転職市場が盛り上がって一番喜ぶのは転職による成功報酬をゲットできる転職エージェントでしょう。
だからこそ、彼らは「自分の市場価値を高めてさらによい勤め先へ行きましょう!」という話をしてくるのです。
「コネ採用」「紹介による採用」「縁故採用」と呼ばれる物の方が明らかに安全ですし、転職後の職場の人間関係面も悩まずに済むことが多いため、私はこちらを優先することをオススメしているのですが、そのような事ができなかったり、そもそもそんなことを思いつかなかった人が彼らのターゲットです。
要は、転職市場を通じたり、転職エージェントに手伝ってもらうことによる転職というのは一番優先度の低い、最終手段でしかないわけです。
したがって、あまりこのような手段に固執しすぎない方がいいです。
そして、私としては、より色んな勤め先に求められるような労働者すなわち
「雇われ力の高い人」
よりも、
「勤め先がなくなってもいつでも独立できるだけの基盤が整っている人」
の方が更に強いと思っています。
したがって、実は一番優先的に取り組むべきは、いつでも独立できるだけの基盤を整えるというあまりにも地味すぎる活動です。
勤め先からの解雇リスクをほとんど気にする必要が無い状態になるのが一番安全です。
そういう意味では、似たような効用が期待できる「経済的自由を目指す」ことも重要だと思っていますが、これと並行して「いつでも独立できるだけの基盤を整えること」も重要だと思っています。
人によって、どちらをより優先して目指すのが成果を上げやすいのかが違うので、そこはご自身の状況に応じて適宜戦略を考える必要があると思っています。
もちろん、経済的自由も達成しているし、しかも、いつでも独立できるだけの基盤も整っている人が一番強いと思います。