あるところに、2人の中途の転職者がやってきました。
2人とも、新しい職場に期待半分、不安半分でありつつも、業務を頑張っていました。
そんなある日、2人が突然職場の上司に呼び出されます。
「一体何の話だろうか」
そう思いながら、2人は上司の話を聞きに行きます。
その内容は衝撃的なものでした。
「実は、会社の業績が良くなくて給与が払えない。せっかく来てもらったところ申し訳ないが、会社の業績を残りのメンバーで立て直さないといけないから、数か月後には退職してもらえないだろうか」
という退職勧奨だったのです。
「せっかく新しい職場に来たのに……」
と2人は衝撃を受けます。
要するに、2人とも転職に失敗してしまったのです。
しかし、会社にはもうお金がないとのことだったので、ごねたところで、賃金を搾り取るにしてもどうしても限界があります。
そこで、2人は転職に失敗してしまったことを受け入れ、しぶしぶ転職活動をはじめました。
1人は家族を養わないといけないので一刻も早く次の転職先を決める必要がありました。
お金が欲しかったから転職したというのもあって、賃金が入ってこない月が生じることにその人の家計が耐えきれなかったのです。
転職後すぐにまた転職を始めたということで、なかなか次の職場は決まりにくかったのですが、前の恵まれた職場よりも少し待遇が下がりましたが、なんとか転職先が決まりました。
もう一人は独身だった上に、もともと労働収入には全く頼っておらず投資で生活費を賄っていたので、次の転職先をすぐに決める必要がありませんでした。
そのため、数か月は仕事がほぼなくなったことをいいことに海外旅行に行ったりするなどまとまった時間がなければできないことをしていました。
さらに、次の転職先を探す際も、
「どうせならば、今までとは別の業界も見てみよう」
と考え、膨大にある時間を利用して今までのキャリアとは全く関係のない業界について情報収集をしたり、実際に面接に行くなどして、感触を確かめていました。
そのようなことをしていたある日、転職する前の職場から連絡が入ります。
「実は、うちは仕事が最近増えたのに人手不足で困っている、君がうちをやめる前よりも大幅に待遇を上げるから戻ってきてくれないか」
と。
要するに、高待遇の出戻りオファーをもらったのです。
その人は「その職場にはそこまで不満はなかったから良い話をもらった」と思い、オファーを受け入れ出戻りすることになりました。
こうして、
転職に失敗し、そのまま待遇が下がってしまう人
と
転職に失敗しても逆に待遇が上がってしまう人
が生じる結果となりました。
同じような立場だった2人の明暗を分けたのはなんだったのでしょうか?
それは、一言で言えば、
リスク許容度の違い
になるでしょう。
一人は勤め先からもらえる労働収入がなければ家計が回らないという状況だったので、
「一刻も早くお金が欲しい」
と内心では思っていました。
それゆえに、
転職する前の待遇よりも見落としする企業からのオファーも受け入れざるを得ませんでした。
もう一方の人は、そもそも勤め先からの労働収入がなくとも家計が回っている状態でした。
それゆえに、
「別に、すぐに次の職場を決める必要はない」
「最悪、起業でもいいかな」
という余裕を持っていたのです。
それゆえに、良い話が来るまで悠々自適に待ち続けることができたのです。
このような状況になると、
自分にとってのLoseの選択肢が出てきても、
「No!」
を明確にたたきつけることが可能です。
「Win-Win or No Deal」を貫徹できるだけの材料が既にそろっていたのです。
このような物語を聞いてあなたは何を感じますか?
2人の明暗を分けたのは、本人の実力や客観的な市場価値ではなく、
リスク許容度の圧倒的な差
です。
このような話を聞くことで、
「自分は普段から何に気を付けなければいけないのか」
ということが見えてくるでしょう。