はじめに
旧NISAの制度では、放置していると5年後の1月1日に保有資産の評価額がリセットされるため、そのタイミングで証券口座を確認すると、一見すると「含み損」が発生しているように見えることがあります。
しかし、これは実際の損失であるとは限りません。制度の仕組み上、生じる現象であることを考慮に入れましょう。
なぜ「一瞬の含み損」が発生するのか?
旧NISAでは、5年後の時点で保有している投資信託や株式などの評価額が再計算されます。この時の価格が、その年の購入価格として扱われるのです。
例えば、2020年にSPYDを1口28ドルで購入し、2024年12月末には株価が43ドルまで上昇していたとします。
しかし、2025年1月の評価額が42ドルに下がっていた場合、証券口座を開くと、
**「実際には、28ドルで購入した物が42ドルになっているので含み益を得ているのだが、43ドルで購入したものが42ドルになっているように見えるため、1ドルの含み損が生じたように見える」**
のです。
この現象が起きる理由は以下の通りです。
- 年間評価制度: 旧NISAでは、毎年1月1日に評価が行われるため、その時点での株価が基準となります。
- 過去の高値との比較: 投資家は、過去の最高値(このケースでは2024年12月末の43ドル)と、年の初めの評価額(2025年1月1日の42ドル)を比較しがちです。
- 心理的な影響: 43ドルという高値を経験しているため、42ドルに下がったことを損失と捉えがちです。
「一瞬の含み損」は実際の損失ではない
しかし、繰り返しますが、これはあくまで**「そのように見える」損失**であり、実際の損失は発生していません。
なぜなら、2024年12月31日時点では、株価は43ドルで評価されており、含み益の状態だったからです。
このような旧NISAの制度による「一瞬の含み損」なのか、本当のただの損でしかないのかは、実際に証券口座を開いて購入当時の取引報告書をみればすぐにわかります。
上記の例で言えば、2020年の購入タイミングの付近で証券会社による取引報告書が出ており、そこには「1口28ドルで購入した」旨の記載があることでしょう。
2025年1月の評価額は、新たな1年のスタートラインに過ぎません。
ここからさらに上がる可能性もあればさらに下がる可能性もあります。
この時点での評価額が、将来の売却益や損失を決定するわけではありません。
「一瞬の含み損」の意味
- 心理的な効果: 投資家は、過去の最高値を基準に損益を判断しがちです。
- 視覚的な影響: 証券口座の表示など、視覚的に損失と表示される場合があるため、心理的な影響が大きくなります。
「一瞬の含み損」に対する投資家の対応
- 冷静さを保つ: 一時的な評価額の変動に一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。
- 制度を理解する: 旧NISAの取得価格の評価制度について深く理解し、なぜこのような現象が起こるのかを理解しましょう。
「一瞬の含み損」はチャンス?
この「一瞬の含み損」は、むしろ投資家にとって**「損出し」**のチャンスとなる場合があります。
- 非課税期間の終了: 旧NISAの非課税期間が終了し、一般口座に移管するタイミングで、評価額が下がっている場合、税金がかかる金額が少なくなる可能性があります。
- 新たな投資への資金作り: 損失が出たとして税金が安くなることで、その分を新たな投資に充てることができます。
まとめ
旧NISAの「一瞬の含み損」は、制度の仕組み上、生じる可能性のある現象です。
しかし、これは実際の損失ではなく、あくまで会計上の処理によるものです。
投資家はこの点を理解し、証券口座が真っ赤になっていたとしても、慌てずに長期的な視点で投資を行うことが大切です。