【第１５７４号】恒産なくして職業倫理無し

リフレーミング

2025.01.17

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～真のプロフェッショナリズムは、経済的安定から生まれる～

「恒産なくして恒心なし」という孟子の言葉があります。

これは、安定した財産や収入がなければ、安定した正しい心を保つことは難しい、という意味です。

これを現代の職業人に当てはめ、**「恒産なくして職業倫理無し」**と言い換えることができるでしょう。

すなわち、プロフェッショナルとして高い職業倫理を維持し、真に社会に貢献するためには、まず自身が経済的に安定した状態、つまり「恒産」を築くことが不可欠である、ということです。

経済的に困窮した状態では、人はどうしても目先の利益を優先してしまいがちです。

生活費を稼ぐために、本来受けるべきではない仕事を請け負ったり、不正な手段に手を染めてしまったりするリスクが高まります。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

フリーランスのエンジニア: 十分な貯蓄や安定した収入源がない場合、クライアントからの無理な納期や報酬の要求を断れず、過重労働や低品質な成果物に繋がってしまう可能性があります。また、生活費のために、倫理的に問題のあるプロジェクトに関与してしまう危険性も否定できません。
研究者: 研究資金が不足している場合、研究成果を捏造したり、データを改ざんしたりする誘惑に駆られるかもしれません。また、特定の企業から多額の資金提供を受けている場合、その企業の利益に沿った研究結果を発表するよう、圧力がかかる可能性もあります。
ジャーナリスト: 経営難に陥っているメディアに所属するジャーナリストは、広告主やスポンサーの意向に反する記事を書きにくくなるかもしれません。また、生活のために、センセーショナルな見出しや、真偽の不確かな情報を掲載してしまうリスクも高まります。

これらの例からわかるように、経済的な困窮は、プロフェッショナルとしての判断を歪め、職業倫理の崩壊を招く大きな要因となります。

一方で、経済的に安定した状態、つまり「恒産」を持つことは、プロフェッショナルとしての高い職業倫理を維持するための、強固な基盤となります。

不当な要求を拒否できる: 経済的に自立していれば、クライアントや上司からの不当な要求を拒否する勇気を持つことができます。「この仕事は私の信念に反する」「この条件では引き受けられない」と、自分の職業倫理に基づいて判断し、行動することができるのです。
長期的な視点で仕事に取り組める: 目先の利益にとらわれず、長期的な視点で仕事に取り組むことができます。例えば、社会貢献度の高いプロジェクトに積極的に参加したり、自己研鑽に時間を投資したり、将来のキャリアを見据えた選択をしたりすることが可能になります。
社会正義を追求できる: 経済的な不安から解放されることで、より公正で公平な社会の実現に向けて、積極的に行動することができます。例えば、不正を告発したり、弱者の権利を守るために声を上げたり、社会問題の解決に取り組むNPOを支援したりするなど、自分の良心に従って行動できるのです。

つまり、「恒産」は、プロフェッショナルが自身の信念に基づき、真に社会に貢献するために必要な「心の余裕」を生み出すのです。

では、どのようにすれば「恒産」を築くことができるのでしょうか？

それは、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。地道な努力と、自己投資の継続が不可欠です。

専門性を高める: 自身の専門分野における知識やスキルを磨き、市場価値を高めることが重要です。資格取得、セミナー参加、専門書の読破など、常に学び続ける姿勢が求められます。
人脈を構築する: 様々な分野の人々と交流し、信頼関係を築くことで、新たなビジネスチャンスや情報源を得ることができます。
財務リテラシーを向上させる: 収入と支出を管理し、適切な資産運用を行うことで、経済的な安定を築くことができます。投資、節税、保険など、お金に関する知識を身につけることが重要です。資産運用の勉強はほぼ必須でしょう。
副業・起業を検討する: 本業以外に収入源を持つことで、経済的なリスクを分散させることができます。自分のスキルや経験を活かせる副業や、将来性のある事業を立ち上げることも、有効な手段です。

これらの努力は、決して楽なものではありません。

しかし、将来の経済的安定と、真のプロフェッショナリズムを手に入れるためには、避けては通れない道なのです。