最近、様々なAI関係のツールを探していると、
「いわゆる、優秀な上司であれば使いこなせそう」
という見解に今のところ私の中では落ち着いています。
「優秀な上司」は頭の中で
「〇〇を作ってほしい」
というイメージを既に創り上げており、それを明快に言語化することができることから、部下にも的確な指示を行える人であり、現行のAIのツールを最も使いやすい立場にいると考えております。
そのような「優秀な上司と部下」コミュニケーションとはまた少し離れた関係が
熟年夫婦のような関係
です。
これは、具体的には、
曖昧に「おい」と言うだけで自動的にお茶が出てくる便利な関係でもあります。
勤め先の場合は、
何を言わなくとも何もかも察してくれる便利なベテラン社員がいたりしますが、
彼らのような忖度能力が高い人たちは今後も重宝されることでしょう。
彼らは長年の付き合いがあるがゆえに、相手のことを深く理解しており、その要望を適切に把握できますし、それゆえに適切な対応が可能です。
逆に言えば、それだけの深い相互理解を行うためには一般的には「長期的な関係」を築く必要があり、そのような「長期的な関係」が続くに値するメリットがお互いにとって必要になります。
例えば、win-winの関係ではなく、実は、どちらか一方にだけ有利な関係の場合、
不釣り合いな関係
となってしまうため、早晩その関係は破綻してしまいます。具体的には、結婚をしていたとしても、熟年離婚がなされてしまう場合もあることでしょう。
特に熟年離婚の場合、夫側が定年退職をすることにより収入がこれ以上家庭に入って来そうにもないというタイミングで妻側から行われることが多いため、妻側から見て「これ以上この人と一緒にいるメリットがない」というタイミングにおいて「長期的な関係」を維持するメリットがなくなってしまうということなのでしょう。
勤め先とベテラン社員の場合には、終身雇用・年功序列による恩恵がベテラン社員側にあるため、ベテラン社員としても勤め先の文化に合わせたり、自分自身より社会的地位の高い上司などに最大限忖度を行って「長期的な関係」を維持するに値するだけのメリットが存在する、ということになるのでしょう。
このような「長期的な関係」がある場合には、AIなどといった新しく出てきたよくわからないものを使用するのではなく、
「別に今のままでええやん」
という気持ちになるのは理解できます。
しかし、人間の場合、
それだけの深い相互理解を行うためには一般的には「長期的な関係」を築く必要があり、そのような「長期的な関係」が続くに値するメリットがお互いにとって必要になります。
その一方で、AIの場合は、私たちを個別に理解してくれるためにそもそも人間との間に「長期的な関係」を築く必要がない、という可能性があります。
要するに、ベテラン社員になったり熟年夫婦なみのコミュニケーションを要するのに例えば20年ほどかかるとしても、AIの場合はそもそもそれほどかからない可能性があります。
例えば、私の場合は、毎日日記をつけており、その数はかなり多いわけですが、人間がこの日記を書いた人物を理解するためにその日記を全部読む努力をするのに数日はかかるところ、AIの場合は数分もあれば十分です。
正直、「私の日記は13000以上ありますが、まずは、これをすべて読んで私のことを理解してください」などと言われてもほとんどの人はよっぽどのメリットを感じなければわざわざやろうともしないでしょう。
それこそ何日かかる作業になるのかわからないですし、労力に見合う成果が得られない可能性が高いからです。
このような人間同士の関係における「長期的な関係」、すなわち本来であれば時間をかけてコツコツと醸成するべき関係がAIとの関係においてはそもそも格段に少なくなる可能性があるのです。
もしも、AIによって特定の個人をものの数分で理解できるようになると、
私が新規購入したばかりのAIに対して
「おい」
と発言するだけで、お茶を準備しなければいけないということをAIが理解してくれる、といったこともそう遠くはない未来においても可能になることでしょう。
こうなってくると、これまで人間同士において必要とされてきたコミュニケーション能力の根幹をも揺るがすかもしれません。
そして、人間同士が付き合う際には、必要なコミュニケーションコストに見合った関係かどうか、それがお互いにとってよりシビアに判断されることになる可能性があります。
そうなってくると、
お互いにとって「明確に」メリットのある関係同士
であればくっつきますが、そうではない人同士では全くくっつかない可能性があります。
このような現象は、恋愛や結婚などといった分野で既に如実に出ていると感じます。
誰から見ても魅力的な人物は、引く手あまたであり、すぐに他人と交際することができますが、そうではない人はなかなか他人とマッチングせず交際できません。
このようにそう遠くはない未来において、
AIの場合は、私たちを個別に理解してくれるためにそもそも人間との間に「長期的な関係」を築く必要がない
ということが判明することでしょうが、それに付随して人間同士のコミュニケーションについて再考されるだろうというのが私の予想です。