凄まじいスピードで成果を上げ続けている人を見ていると、人間誰しも焦りがちです。
そして、自分も早くあのような成果が欲しいと焦った結果、自分では許容できないレベルのリスクをとることになってしまって、後々上手くいかなくなってしまう、ということが起こりかねません。
急にFXにハマり出す人もそうですし、宝くじで一発逆転したい人もそうですし、いきなり起業したり独立したりする人など、後を絶ちません。
もちろん、そのような背水の陣のごとく、人生の一発逆転のための手段を完全に否定するわけではありません。
それで上手くいく場合がないとは言い切れませんし、事実上それしか手段がないという人もいるでしょう。
しかし、少しでもそうではないといえるような状況の人がやるべきことは、成果が欲しいと焦るばかりにリスクを取り過ぎて退場してしまうというリスクをそもそもなくすということでしょう。
投資でも何でもそうですが、とにかく退場だけは避けなくてはいけません。
たとえば、暗号資産などのようにボラティリティが高い金融商品に全財産を突っ込むということは私の中では絶対にやってはいけないことにあたります。
この前の暗号資産の下落で何人人生を退場させられたのか、私は把握していませんが、その直前まで、暴騰する含み益を自慢し続けていた人がいましたね。
資産の含み益が減ったりすることで胃がきりきりするような精神状態になるくらいだったらリスク許容度を大幅に超えてしまっているということを意味するので、そもそもそこまで入金してはいけないと言うことになります。
何年も相場にいると、この辺りの感触、すなわち、「自分のメンタルがどれだけの損を許容できるのか」ということが分かるようになってきます。
私自身も、初めて証券口座にお金を投じたときには、たった1000円の含み損であっても、気になってしまって、胃が痛みましたが、今となっては、6桁ぐらいの含み損だったら耐えられる自信があります。7桁ともなるとコロナ相場でも経験していないため、まだわかりません。
そして、そこまで耐えることができるようになったのは何故か、ということを考えると、それは単に相場に何年かいて慣れたからという理由にとどまりません。
それはやはり、投資の世界に片足を入れつつも、生活費を最適化し続け、月10万円以下の少ない額でも自分は確かに生活できる力があるのだという確信を抱くようになったことに加えて、勤め先からの安定した給与(但し仕事は大変)を手にし、平均を遙かに超える貯蓄率を安定的に実現できたから、という要因が大きいと考えています。
今は、基礎的な生活費のみならず、自己投資にもしっかりとお金を使っているので、さすがにそこまでいっていませんが、一時期は手取り年収(ボーナス込み)貯蓄率90%を超えていました。
手取り貯蓄率90%というのは、月の生活費が10万円だった場合には、90万円ほどを貯蓄することができて実現できる数字です。単純に月100万円以上の収入が必要ですので、ハードルがかなり高いです。
因みに、手取り貯蓄率80%の場合で月の生活費が10万円だった場合には、40万円ほどを貯蓄することができて実現できる数字です。こちらは月50万円ほどの収入が必要になるため、貯蓄率90%に比べればはるかにマシですが、それでもかなりの収入と低い生活費を要求されます。
上記は、月10万円の生活費がかかることを想定しているので、実際にはそれ以下の生活費を実現できる人は難易度がかなり下がります。
それぞれの変数を高める努力を怠らなかったからこそ、リスク許容度を上げることに成功したといえるでしょう。
逆に言えば、このようなリスク許容度を一刻も早く上げることにまずは全力を挙げた上で、初めて高いリスクを担う必要がある行動に出るべきです。
リスク許容度をあげる努力をし続けると、そのうち、「よく考えたら、別に、成果を得ることを焦る必要なんて無いか」という気持ちになってきます。
このような成果を焦らなくても良い理由を自ら創り出して行くことができるということが、リスク許容度を高めていく努力の副作用として生じることになるでしょう。
また、ロバートキヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』という本に依れば、BクワドラントやIクワドラントの紹介が為されており、それを目指すことを推奨されているように読めますが、これらのクワドラントはリスクを負うことを要求されます。逆に言えば、リスクを背負うことができるだけの状況を持っている人でなければ、なかなかそのクワドラントに行くことに挑戦することは難しいということではないでしょうか。リスクを適切に管理したうえで他の人とは違った行動をする力が確実に求められるのです。
再現性を考えれば、リスク許容度をまだそこまで高められていないと感じている人は、下手に周りの人に煽られるままに、無謀な挑戦をせずに、堅実に基盤を固めながら、しかし、来たるべきチャンスを逃さぬように虎視眈々と準備をし続けるという姿勢が重要になってくるでしょう。
焦らずに待つことの重要性について有名な日本の歴史上の人物といえば、徳川家康でしょうか。「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、ホトトギス」というやつですね。彼はチャンスを物にするために自らの健康状態にもかなり気を使っていたようです。
自分にとって、本当の、重大なチャンスがやってくるまでは安直な甘い話には決して乗らず、妥協せず、成果を焦らずにチャンスを待つことができるような体制を日々盤石に創っておくことが重要だと考えています。
こんなことを書いている私ですが、それでも、誘惑に負けてボラティリティが高い金融商品に手を出したくなってしまうときはあります。というか、実際に負けたことはあります。
しかし、その時は、非常に少額を入金することで我慢するようにしています。やはり大金を入れるのは躊躇しますが、少額だったら負けても良い経験になる可能性があるという言い訳ができるからでしょう。
どうしても、我慢できなくなっても少額にとどめる、レバレッジは絶対にかけない、と決めておくことが大事になってきます。
状況によっては、他人の力を借りて、「自分は絶対に●●しない!」と宣言してしまうのも良いでしょう。単なる自制心は全く頼りになりませんから。
退場だけは避けて、リスク許容度を超えてしまう取引だけには手を出さないという基本姿勢を崩さないようにするためにも、一種のシステムの一つとして、成果を焦らなくても済むような状況を創り、リスク許容度を高める努力を続けていきたいと思います。