投資戦略において、一般人向けにバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)が推奨されることが良くあります。
バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)とは、長期保有を行うことを前提とした投資手法のこと。株式投資におけるデイトレード(投資期間:1日)、スイングトレード(投資期間:数日程度)、ポジショントレード(投資期間:数週間程度)などに代表される短期売買の投資手法に対する対義語で、「買い持ち」ともいいます。バイ・アンド・ホールドによる投資において選択対象となるのは、成長期待度の高い企業になるのが一般的です。
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ha/J0367.html
「バイ・アンド・ホールドによる投資において選択対象となるのは、成長期待度の高い企業になるのが一般的です。」と書いてあるとおり、長期目線で、今後保有しているだけでどんどんその価値を増していくようなものを選択対象とするわけですね。
デイトレードやスイングトレードやポジショントレードで成功している人もいるようですが、私としてはこれを基本的に採用することはできないと考えています。
特に取引を行う度に手数料が取られてしまうタイプの銘柄を狙っている場合、売買を繰り返すだけでいつの間にかとんでもない量の手数料が取られている場合があります。
このような購入諸費用などは地味に馬鹿にできません。
これに対して、バイ・アンド・ホールドの戦略をとった場合、利益を確定したい場合は取引回数は最小限度となるため手数料がそこまで取られません。
株式については、これは気絶投資法と呼ばれることもあるとおり、買ったまま忘れてしまうことが一番良い場合があるようです。
前提として、①長期目線で今後保有しているだけでどんどんその価値を増していくような銘柄を最初に選択できることが最重要なので、この辺りの選定眼が問われることになるというのがこの手法における最大の難関となります。最初でここにミスがあると致命的でキツいと言うことですね。
この点は、近年はいわゆるインデックス投資が推奨されていることが多いようです。まあ、誰も結果は保障してくれませんけどね。
さらに、②途中で現金が必要になってしまって利益を確定させなければならない状況を避けるために余剰資金で投資するようにするという資金管理能力が必須です。これに加えて、③「今、利益確定しておかないと後々損することになるかもしれない」とか「なんだかんだで、今の値段が一番高値なのではないか」などとといった売却への誘惑と戦うメンタルの強さも必要です。
このように、①②③を見ていくと、いわゆる、言うは安しの戦略であり、実際にやろうと思うと、意外と難しい戦略であるということが分かると思われます。
また、この方法はいわゆる、
「株式投資で成功したい!」
「株式投資で一気に大もうけしてお金持ちになりたい!」
という人には向いていません。
すなわち、株式投資で一気に短期間でテンバガーなどを狙う場合には、デイトレードやスイングトレードやポジショントレードを狙うことになるので、事業性を帯びることとなり、またトレード画面をしっかりとみていないといけなかったりする場面もあるため、労働時間をかなり費やす必要があります。
逆に、バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)をするべき人というのは株式投資以外の収入源を得ることにつき頑張っている人、ということになるでしょう。少なくとも株式投資による利益をメインの収益源にはしていないと考えられます。
しかしながら、そのような人だからこそバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)は有効であって、かつ戦略として採用しやすいと考えられます。
そして、バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)の戦略の最大の特徴は、
刺激が無い、地味すぎて極めてつまらない
事にあると思われます。
この④つまらなさに長期間にわたって耐えないといけない、のも地味にきついと感じる人もいるようです。
実際にやってみると分かるのですが、デイトレードやスイングトレードやポジショントレードを狙うためにトレード画面を見続けているとハラハラしたり焦りを感じたりするので、非常に刺激的で興奮しやすいです。
これはパチンコをやっている感覚に近いです。
このような刺激を常に浴びたいという欲求が強い人もバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)を採用できません。
したがって、「退屈を受け入れる力」も重要になります。
このようなバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)戦略は金融商品を購入する際の戦略以外にも参考にできると考えられます。
例えば、不動産投資なども考えてみましょう。
不動産投資というのは購入する際にやたらと購入諸費用などがかかることが特徴としてあげられると思われます。
しかも、売却する際にも仲介手数料が大量に取られることもあります。
すなわち、取引する度に手数料のようなものがかなり取られるのですね。
したがって、短期的に売買を繰り返して成功したい場合には、かなりの含み益を生じさせて売却することになります。
そうしないと元が取れないわけですね。
この辺りの才覚が優れている人は、売却を織り交ぜて不動産投資の拡大をしているようです。
しかし、高く売却できるかどうかというのはその時の市況などにもよりますので、完全にコントロール可能な物ではありません。
したがって、ここの辺りにあまり自信が無い人はバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)戦略、すなわち不動産を購入したら売らないことにするというのを基本方針とすることをオススメします。
しかしながら、株式投資と同様に、①長期目線で今後保有しているだけでどんどんその価値を増していくような不動産を最初に選択できることが最重要となる、すなわち資産性が高い不動産を狙うことになると考えられるので、この点の目利きは必要になってくると思われます。
しかも、②途中で現金が必要になってしまって利益を確定させなければならない状況を避けるために余剰資金で投資するようにするという資金管理能力が必須なわけですが、①の条件を満たすような不動産は他の人から人気が高い場合が多く、物件価格がそもそも高すぎるので、②を満たすためにはそもそも相当な資金力が要求されそうです。したがって、いわゆる富裕層の人が取りやすい戦略がこのバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)戦略としての不動産投資ということになりそうです。
残念ながら、庶民の一発逆転の戦略にはならないわけですね。
資金力が元々無い人は株式投資でいうところのポジショントレードのような発想で、途中で上手い具合に売却を織り交ぜながら事業性を帯びる形で成功を目指すしかないでしょう。
また、不動産投資でバイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)戦略を取る場合も、ひたすら手間のかからない物件を選択することになると考えられるため、これも刺激的なことがなく、退屈でしょうね。
他の例では、そうですね、ビジネスや事業を自分の力で伸ばしていく場合、あるいは何かのプロフェッショナルになる場合にも似たような事が言えるのではないでしょうか?
例えば、特定の仕事をこれから取り組もうと考えたとします。
上に書いた、バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)戦略の①~④の特徴に即して考えてみます。
まず、①長期的な目線で今後伸びそうな業界を選んだ方が良いでしょう。衰退業界を選ぶとどれだけ努力を継続していてもそれが報われない可能性があります。また、仕事の作業内容についても努力を重ねれば重ねるほど成長する内容を選択することが重要でしょう。
つぎに、②途中でリソースが途切れないように、余剰の時間などを確保しつつ取り組むことになるでしょう。具体的には、家事や育児や他のことに時間を費やされてしまうのはリスクになるということです。他にも趣味のために使いたい時間もあるかもしれませんが、時間が無いと仕事は基本的にできないので、うまく時間という資源を確保することができる体制を創ることが重要になるでしょう。そういう意味ではもともと時間持ちの人が有利です。
さらに、③そろそろ引退するのが一番努力のコスパがいいのかもしれないなどといった誘惑にも乗らないようにする必要があります、何故ならば一生涯仕事を続けた方がその仕事が上手くいく可能性が高いためです。
その上で、④まるで修行のような単調な作業があったとしてもコツコツ努力をし続けていくだけの忍耐力も重要になるでしょう。つまらない仕事だからといって途中で辞めてしまったらその分野の成長も途切れてしまうためです。退屈さに負けてはいけないのです。
このように、バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)戦略を見ていくとなんだか微妙な気分になりませんか?
というのも、その特徴を見ていると、
なんだか、
元々の勝ち組がさらに安定して勝ち組を維持するための方法論
を見せつけられているような気分になります。
しかも、維持したら何か意味があるのかと言われると、
「?」
となるような気もします。
とにかく退屈なのです。
つまりは、バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)戦略は安定しまくっているものの、刺激が別途欲しい場合は自分で何かをそこから見いだしたり、他の分野から敢えて探し出す必要があるということになりそうです。
客観的に見ると、成功しているように見えている人であっても、どこか微妙な気分になっているような人を偶に見かけるのは、このような安定しまくりの退屈さにも原因があるのかもしれないですし、やはり、自分の幸福感というのは常に自ら開拓する必要がありそうです。