【第1657号】リスクをリスクと見極められないと即死する

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日常生活においても、ビジネスにおいても、あるいは人間関係においてさえも、私たちは絶えず「リスク」と共に生きています。しかし、多くの人にとって、リスクとは「起こってから気づくもの」であり、「起こる前に察知するもの」ではありません。これは極めて危うい認識です。なぜなら、リスクというものは、それが顕在化してからでは手遅れになっていることが多く、「あのとき気づいていれば…」では済まない場面があるからです。

リスクをリスクとして正確に見極める力がなければ、即死する。それだけで命取りになる――これは比喩ではなく、実際の人生やキャリアにおいても繰り返し観察される現象です。

直感的に「ヤバそう」と感じても、なぜ人は止まらないのか

人は、ある程度の経験を積んでくると「なんとなく嫌な予感がする」「このまま行くとまずいかもしれない」といった直感を抱くことがあります。しかし、その直感がいくら働いていても、「明確な根拠がない」ことを理由に、そのまま突き進んでしまうケースが後を絶ちません。

たとえば、企業の経営判断において、「この投資は収益性が不透明だ」「この人事は組織の空気を壊すかもしれない」と薄々思いながらも、実際には誰も明確に反対の声を上げず、結果的に致命的な失敗につながることがあります。あるいは、日常生活の中でも「この道は夜中に通らない方がいい」「この人には深入りしない方がいい」と感じながら、なぜか「まあ大丈夫だろう」と自分をごまかし、後に大きなトラブルに発展してしまう場面も少なくありません。

このように、人は「曖昧な不安」に対して、適切な防御行動を取ることが非常に苦手です。リスクとは「確定情報」ではなく「不確実な兆候」であるがゆえに、言語化が難しく、社会的に共有されにくいものなのです。

顕在化してからでは遅いリスクの具体例

1. キャリア構造の崩壊

ある優秀な若手弁護士が、比較的穏やかな事務所に転職しました。業務量も少なく、パートナーの顔色を伺わずに済む快適な職場でした。しかし、あるときから「ここには勝負どころがない」「自分の成長曲線が鈍ってきている」とぼんやり感じ始めます。それでも、「まあ待遇はいいし、仕事も楽だから」と動かずに数年が経過。気づいたときには、自分よりも年下の人材がどんどん重要な案件を任され、自分は“楽な仕事だけを与えられる人”として位置づけられるようになっていました。リスクはずっと静かに進行していたのです。

2. 組織の空気が変わったとき

あるNPOの理事会で、かつては活発だった議論が減り、トップの発言に誰も反論しなくなっていきます。「なんとなく変だ」と感じながらも、全体の雰囲気に流されて形式的な承認ばかりが続き、ついには団体が法令違反に近い判断を下してしまいました。外から見れば一目瞭然でも、内部にいた者には「なんとなくヤバそう」としか感じられなかったのです。事が起こって初めて、「あのとき止めておけば…」という言葉が飛び交いました。

3. 個人的な人間関係における危うさ

人付き合いでも同様です。依存傾向のある人物や、感情の起伏が激しい恋人に対して、「この人と距離を取った方がいいのでは」と思いながら、情や慣れ、あるいは一時の快適さに負けて関係を続けてしまう。そして最終的には深刻なトラブルに巻き込まれることになります。こうしたリスクも、当初は“直感”で感じ取れるものでありながら、理性が過小評価してしまうことで、無視されるのです。

なぜ人はリスクを過小評価するのか

人間の脳は、「予測不可能な未来」よりも「安定した現在」を優先する傾向があります。現状維持バイアス(status quo bias)や、正常性バイアス(normalcy bias)がその典型で、たとえリスクの兆候があっても、「たまたまだろう」「まだ大丈夫だろう」と無意識に処理し、合理化してしまうのです。

また、職場や組織のような集団の中では、「空気」によってリスクの共有が阻まれることがあります。誰か一人が「これは危険かもしれない」と思っても、それを口に出した瞬間に“協調性がない人”として扱われかねず、結果的に沈黙が続いてしまう。こうした集団心理が、リスクへの感度を麻痺させる温床となっているのです。

人生の教訓:リスクとは「未然に」対応するもの

これらの事例から導かれる教訓は、極めてシンプルかつ厳しいものです。リスクとは「起きてから」ではなく「起きる前」に感知して動くべきものであり、それができないと、取り返しがつかない結末を迎える可能性があるということです。

直感的な「これはおかしい」「違和感がある」という感覚を軽視せず、その背後にある構造や要因を自分なりに掘り下げる習慣が必要です。言語化できない不安こそ、最も深刻なリスクの兆候である可能性が高い。だからこそ、「ヤバそう」と感じたら即座に立ち止まり、情報を集め、仮説を立て、他者に意見を求め、自らの選択肢を再検討する行動を怠ってはなりません。

そして何より重要なのは、「即死する可能性のある判断」ほど、周囲に相談できない空気の中でなされるという事実を忘れないことです。静かな失敗、誰も止められなかった崩壊――それらはすべて、「リスクの見極めを誤った瞬間」から始まっていたのです。

最後に:違和感は“贈り物”である

違和感や不安という感情は、あなたの無意識が発するアラームです。それはしばしば言葉にならず、証拠もないままやってきますが、それこそが未来を守るための“贈り物”なのです。

自分の感覚を信じること。他人が「大丈夫」と言っていても、あなた自身が「危うい」と思うなら、それはすでにリスクなのです。最も危険なのは、何も見えていないまま、リスクのただ中にいるという事実にすら気づかず突き進んでしまうこと。

だからこそ、リスクをリスクと見極められる人こそが、本当の意味で生き残っていけるのだと、私たちは肝に銘じなければなりません。

美紀のプロフィール
夢見がちな社会不適合者

社会人7年目かつ会社経営者(法人5期目)。
都内在住、マッチングアプリ上位0.0X%(上位3桁)の超人気女性会員。
フォーチュンレディ (Fortune Lady:幸運な女性)

かつて不登校になり片っ端から出席点を落としまくる。高校生の頃は家出経験も。
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INTJ型女性による皆既日食への歩み
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