投資やあらゆる判断において最重要なのは、
適正なリスクをとれるようになること
であります。
私たちは、幼い頃から、
「危ないことはやらないで!」「リスクを取らないで!」
と周りの人から言われたかと思えば、
「今の時代は、リスクを取らないことこそがリスク!」
などと言われて積極的にリスクを取ることを推奨されることもあるため、
「一体どっちなんだよ……勘弁してほしい」
と感じている人も多いことでしょう。
例えば、金融商品への投資一つをとっても、
「今の時代は貯金するだけではだめ!積極的に資産運用しないといけない!」
と言われたかと思えば、
「怪しい投資に手を出して損をするのは自己責任!投資なんかやめて大人しく貯金!」
などと言われることもあるため、
「リスクを取らないと色々と言われるし、リスクを取って失敗しても色々と言われるし、結局どうすればいいのだろうか??」
などと感じたことがある人もいることでしょう。
結論から言えば、
適正なリスクを取る
ことができれば良いのですが、これを聞くと、
「で、『適正』って何なの???」
という当然の疑問が生じます。
しかし、この疑問に対しては、一般論として考えると、
適正かどうかはその人の状況や将来の目標による
などといった毒にも薬にもならない当たり障りのない結論が出て来ざるを得ないため、
「結局よくわからない……」
などと感じている人も多いでしょう。
適正かどうかの判断には、多くの場合、
①生じ得るリスクをある程度把握し、
②当該リスクの重要度を判断し、
③当該リスクの顕在化の可能性を把握する、
ということをした上で、
④期待できるリターンの内容、
⑤当該リターンの顕在化の可能性、
⑥当該リターンの重要度を判断、
して、
最終的に、「適正と言えるか否か?」を判断することになるでしょう。
このように要素を分解していくと、意外と判断項目が多いことがわかります。
正直、こうやって並べてみるだけで「考えることが多そうで正直めんどくさい」と感じさせます。
いわゆる、初心者の場合は、
①~⑥までの判断項目をほとんど把握しないままに行動してしまう
ということをするでしょう。
これは、子供が好奇心の赴くままに人気のない山の中に「山の方が面白そうだから行ってみたい!」と何の準備もなしに突っ込んでいくようなものです。
周りの大人たちは当然そのような子供は危ないので必死になって止めることでしょう。
大人のいうことをまともに聞かない子供は山の中で不慮の事故に遭って死亡してしまう可能性ももちろんありますが、誰も入ろうとしなかった山の中から無事に帰還して宝物を得てくるかもしれません。
これは、何もわかっていない新入社員が周りの先輩たちのアドバイスを聞かずに気合だけで突っ込んでいって成果を上げてくるのと似たような現象です。
このような初心者の状態は、リスクをそもそも認識できていない状態、リスクへの無知が引き起こしているのでしょう。
その行動や判断にどのようなリスクが存在するのかそもそも知らないのですから、リスクは0であるという間違った認識のまま強気に突っ込むことができる、という強みがあります。
これは、ビギナーズラックが生じる可能性もありますが、そのまま見えていなかったリスクが顕在化して再起不能の事態になる可能性もあります。
例えば、不動産投資などをいきなり始めてしまった初心者であっても、上手くいくということはあり得ると言えばあり得るのです。
このような、無知ゆえの強さ、というのも確かに存在します。
もっとも、このような状態は危険なので、真面目な人は、
「何かリスクはないのだろうか???」
と事前にしっかりと勉強し始めます。
そして、
①生じ得るリスクをある程度把握
することになるでしょう。
例えば、不動産投資などは一般論レベルで以下のようなリスクがあることが指摘されます。
- 市場リスク:不動産市場の変動によって、不動産価格や需要が変動する可能性があります。
- 建物の老朽化:建物が古くなり、修繕や改装が必要になることがあります。また、地震などの自然災害によって建物が損壊することもあります。
- 入居者リスク:入居者が滞納したり、トラブルがあった場合には、家賃収入が得られなくなる可能性があります。
- 利回りの変動:市場の変動や建物の老朽化、入居者リスクなどによって、投資の利回りが変動する可能性があります。
- 融資リスク:融資を受けて投資する場合には、金利の変動や返済期間中の利子や元本の返済によるキャッシュフローの影響を受ける可能性があります。
それに加えて、不動産投資に実際に失敗した人の事例集などを集めていく人が多いでしょう。
「なるほど、こういったリスクがあるのか」
ということが事前学習によってある程度わかるようになってきます。
しかし、教科書レベルで身に着けたこのような知識で止まると、
過度のリスクに対して怯えるだけで行動出来ない人
ができあがります。
あるいは実際に小さな失敗をしてしまって、臆病になってしまい、以後行動出来なくなってしまう人もいます。
ある程度、勉強をし、経験をしているからこそ、リスクをしっかりと認識してしまって、リスクに怯えてしまうのですね。
あなたの周りにもそのような人いませんか?
そもそも、リスクを把握するために勉強するだけでも相当時間がかかりますし、大変なので、この段階で止まってしまうのも無理はありません。
しかし、大事なのはここからで、
①生じ得るリスクをある程度把握
することに加えて、
②当該リスクの重要度を判断し、
③当該リスクの顕在化の可能性を把握する、
ということをしなければ適正なリスクか否かを判断することは困難です。
しかも、②においては、定量的な判断以上に定性的な価値観の問題も入ってきます。
例えば、
「会社のこの上司に反抗したらクビになってしまうかもしれない」
という状況の場合。
クビになる、というリスク自体はすぐに把握できるものの、
クビになってしまうとどんな不都合が生じてしまうのか、それがどれだけまずいことなのか、という重要性についても落ち着いて考える必要があります。
そもそも、一般的にクビになって本気で困るパターンというのは、
①そもそも資産所得の範囲内で生活費を賄えていない(金がほとんどない)
②自分で仕事を取って稼ぐことができない
③転職先をすぐに見つけることが極めて困難
④助けてくれたり養ってくれる人間がいない
という場合であって、人によっては意外と困らないという場合もあるのです。
これは、ポケットモンスターでいえば、耐久力のあるポケモンであるでしょう。
耐久力のあるポケモンならば、どんなに攻撃を受けてもある程度耐えられることを前提とした戦略をとることができます。
②当該リスクの重要度
の判断は冷静に見ていかないとイメージだけで判断しがちであり、
「危ないかも!」
と過度に怯えたり、
「大したことないだろう」
と過度に楽観視してしまうこともあるため、冷静に状況を判断することが大事になります。
しかも、この重要度に関しては、不変の物ではなく常に変動するのです。
あなたにとって10年前にはとてつもなく重要性の高いリスクだったのにもかかわらず、今は全くそんなことはない、ということも十分にあり得ます。
普段からコツコツと努力をするべきことは、一言で言えば、自分のリスク許容度をなるべく上げること、になるでしょう。
加えて、
③当該リスクの顕在化の可能性
についても考える必要があるでしょう。
例えば、気候一つをとっても、大きな地震が起こる頻度と雨が降る頻度というのは全然違いますので取るべき対策やリスクヘッジの性質も変わってきます。
以上のように考えていくと、
適正なリスクを取る
と文字にすると簡単に見えますが、考えるべきことはとても多いということになるでしょう。
そして、
リスクの無知→リスクへの過度の怯え→適正なリスクを取れる、までのプロセスにはそれなりに時間がかかります。
このプロセスを意識しつつ、なるべく早く適正なリスクを取れるようになるために必要なのは、やはり経験であり、
小さいリスクを取り続けることを意識することが重要になるでしょう。