かつて、私が学生だった頃、就活で内定先が決まった友人が以下のようなことを話していました。
「今の内定先は、月3万円の住宅手当が出るんだって。俺は月9万円の家賃の賃貸物件に住む予定だから、毎月の家賃負担は実質的には6万円だな」
と。
果たして本当にこの友人の場合、毎月の家賃負担は実質的に6万円になるのでしょうか???
どういうことかというと、まず、現行制度では、住宅手当(家賃補助)というのは所得税の課税対象です。
現金で支給される住宅手当や、入居者が直接契約している場合の家賃負担は、社宅の貸与とは認められないので給与として課税されます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm
つまり、社宅として貸し出されたところに住んでいるわけではなく、自分名義で契約して賃貸物件に住んでいる場合は、住宅手当分は普通の給与として扱われるわけですね。
普通の給与として扱われるということは、住宅手当として出ている月3万円分、年間だと36万円につき税金を払うことになります。
また、住宅手当は社会保険料も増加させます。
社会保険では、住宅手当は労働の対償となる報酬に該当するので、報酬月額に含まれ住宅手当がない場合より通常は社会保険料が増加することになります。
そうなってくると、勤め人の場合、
①額面年収600万円で、住宅手当月3万円あり
と
②額面年収636万円で、住宅手当なし
の場合では、その給与の毎月内訳にもよりますが、税金や社会保険料の負担がほぼ変わらない以上、結局、手取りは大して変わらないのではないか、という話になってきます。
もちろん①と②では労働条件などの他の要素が違うと言うことがあり得るでしょうが、①の条件を見て、
「住宅手当が月3万円出るから、自分の家賃の負担額は毎月3万円減る!!」
と考えるのは早計な発想であるということです。
実質的な手取りから考えると実はそこまで負担は減っていないでしょう。
ほとんどの勤め人は自分の給与明細表を真剣に見ていないようですが、よくよく見返してみると想像以上に額面給与からさまざまな名目でお金が吸い取られているということがよくわかります。
冒頭の友人の場合、私は彼の給与明細をチェックしたことが一度もありません。
しかし、上記の理由から彼の毎月の家賃負担が実質的に6万円になる可能性は限りなく低いと言えます。
何故そういうことが分かるかというと、上記のように制度に対する基本的な知識があるからなんですよね。
だからこそ、
「住宅手当」
というワードが出てきた瞬間に、
詳しいことは聞かないと分からないけれども、おそらく彼はそこまで得してないんだろうな
ということはすぐに分かります。
しかし、彼のようにほとんどの人は、住宅手当に関する基本的知識が無いために
「ウチは住宅手当が月3万円でます!」
と聞いた瞬間に、
「お得かも!」
と何の計算することもなく思ってしまうのです。
何が言いたいかというと、資産形成に当たって税金や社会保険料に関する知識は必須であり、普段から勉強をしていたり、詳しい人に話を聞けるようにしておかないと損をすることもあるということです。
お金持ちの人はほぼ全員といっていいほど税金や社会保険料に対する関心が高いです。
逆に、貧乏なままの人はびっくりするほどこの辺りの知識がありません。
お金持ちになりたいだとか、貧乏なままなのは嫌だと思っている人は、税金や社会保険料について最低限の知識をつけましょう、という話でした。